Netflixのテッド・サランドス共同CEOは、インド事業の開始10周年を記念したインタビューの中で、AIに対する姿勢を語った。同社はAIを強力な創作ツールと捉えているが、ストーリーテリングにおける「人間らしさ」を置き換えることは決してないとしている。Netflix専門の独立系ニュースサイト「What’s on Netflix」が伝えた。

サランドス氏は、とりわけ限られたリソースの中で野心的なプロジェクトに取り組むクリエイターにとって強力なツールだと位置づけた。自社が今年既に約300本の作品制作で、プリビジュアライゼーションやポストプロダクションなどでAIツールを活用していると指摘。AI活用を「より大規模で質の高いストーリーを伝える絶好の機会」と捉え、コスト削減が第一目的ではないと強調した。

買収したベン・アフレック設立のAIスタートアップ「インターポジティブ(InterPositive)」については、ハリウッドの再撮影問題を解決し、制作がスケジュールと予算を守れるようにする素晴らしいツールだと評価した。

『ストレンジャー・シングス』などに匹敵する、スタジオ品質のショートフォームコンテンツをAIが生成する脅威について質問が上がると、コンテンツを完全にAI生成に切り替えることを決定した中国の大手マイクロドラマ企業の視聴者エンゲージメントが70%急落したことに言及。「視聴者はコンテンツや番組に触れる際、現実逃避あるいは共感のいずれかを求めている」とした上で、AIによるストーリーテリングは現時点で、人間味に欠ける部分があることが人々に拒絶されている理由だと話した。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「NetflixのサランドスCEOが、AIとの距離感を興味深い実例で語った。中国のマイクロドラマ大手が、コンテンツを完全にAI生成へ切り替えたところ、視聴者のエンゲージメントが70%急落したというのだ。同社自身は今年すでに約300本の制作でAIを使う推進派である。それでも「人間らしさを置き換えることは決してない」と言い切る根拠が、この数字だ。絵コンテの事前映像化や撮影後の仕上げなど、人の創作を支える工程ではAIは強力に効く。だが物語の芯まで委ねた途端、観客は離れた。サランドスいわく、人が作品に求めるのは「現実逃避か共感」であり、いまのAIの語りには人間味が欠けるから拒絶される、と。道具としては全面採用、主役としては不採用——300本の実践者が引いたこの線は、AI時代の制作論として最も説得力のある現在地だろう。」