Netflixは7月16日に発表した決算の中で、今年に入ってから、同社プラットフォーム上で配信されている約300作品で生成AIが活用されたと明らかにした。

AIの利用範囲は、企画・プリビジュアライゼーションからポストプロダクション、公開に至るまで、制作プロセスのあらゆる段階に及んでいると説明。大半はポスプロの段階で活用されたとしている。

同社は「従来の方法よりも迅速かつ低コストで、より高品質な成果物を提供するために、こうした(AI)ツールをますます活用している」とコメント。生成AI技術がなければ、重要なショットやシークエンス(エピソード)を省略せざるを得なかった場合もあったとしている。それでも、テッド・サランドス共同CEOは、NetflixがAIを使ってクリエイティブな専門家を置き換えるつもりはないと述べた。

作品例は『Glory』『Brasil 70: A Saga do Tri』『The American Experiment』など。生成AIにより、群衆の規模の拡大や戦闘シーンなど「極めて複雑なシークエンス」の制作が可能になったという。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「Netflixが、今年すでに約300作品で生成AIを使ったと決算で明かした。興味深いのは、同じ月に正反対の宣言も話題になっていたことだ。新作アニメ『攻殻機動隊』は「生成AIを一切使わず全て手描き」を掲げ、喝采を浴びた。片や300作品でAI、片やAIゼロ。矛盾しているようで、実は同じことを言っている。どちらも「作品の質のために最適な道具を選んだ」という宣言なのだ。
Netflixの場合、AIの多くは仕上げ工程で使われ、群衆や戦闘のような複雑な場面を可能にした。予算の壁で諦めていたショットが撮れるようになったという。一方の攻殻は、人間の手触りこそが作品の核だと判断した。AIか手仕事かという二者択一ではなく、作品ごとに何が最適かを選ぶ時代に入った——300という数字とAIゼロの宣言は、その両極を示す道標なのだと読み取れる。」