増井健仁がビジネス、エンタメ、政治など様々な分野のキーパーソンを迎え、“いま起きていること”と“これからの社会”を多角的に読み解き、新しい視点とヒントを届ける「MEDIAMIXI with interfm」。2026年4月28日放送のゲストは、ラッパーで起業家のYZERR氏が登場。

川崎発のHIPHOPクルー・BAD HOPの中心メンバーとして、メジャーレーベルや大手事務所主導ではなく、自分たちの手でキャリアを切り拓き、2024年に東京ドームでの解散ライブを実現。解散後はHIPHOP専門メディア「FORCE MAGAZINE」を立ち上げ、2025年にはFutureやCentral Ceeら世界のトップアーティストを横浜アリーナに集めた『FORCE MAGAZINE PRESENTS FORCE FESTIVAL』を主催し、延べ約3万人を動員した。2024年には「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」に「起業家、プロデューサー」として選出され、Forbes JAPANでは「ラッパーから起業家へ」と紹介されている。

放送日となった4月28日は、4月23日にリリースされた作品『Rich or Die 3』を携え、初のソロ・ワンマン「ROD III Concert」を皮切りに全国ツアー“RICH OR DIE III” JAPAN TOURが幕を開けた日でもある。「面白いものを作ってるだけ」と語るYZERR氏が、東京ドームに至る“逆算”の思考法、ムーブメントを「責任」と捉える理由、そして“気合い”で世界のトップを口説いたFORCE FESTIVALの舞台裏までを語った放送のハイライトをお届けする。

夢を実現させるのは「説明書がついてるプラモデルみたいな感覚」に近い

2014年から活動をし始め、2018年11月13日には日本武道館にてワンマンライブ「BreatH of South」を開催したことでも知られているBAD HOP。その構想は思った以上に綿密に計画されていたそう。

増井「僕が伺った限り、10代の頃にはもう2年間で武道館に立つよってプランをYZERRさんは考えてたって」

YZERR「そうですね。でもパッと出てきたものを箇条書きにしたという感覚に近くて、考えたことはないかなと」

増井「一般的な方たちは「こんなことできたらいいな」とか「こうなりたいな」みたいのがあっても、みんながみんなそこにたどり着くわけじゃないじゃないですか」

YZERR「あー……」

増井「ここなんだよね。YZERRさんからしたら、たどり着ける人だから、今のこの「あー」ってなるのがおもしろいのよ。一般的には「ですよね」って言うのが普通で、たどり着けないから。でも、この人は「なぜたどり着けないんですか?」って言うのを、マジで思ってるんですよね」

YZERR「説明書がついてるプラモデルみたいな感覚なんですよ」

増井「すごいよね」

YZERR「高度になれば高度になるほど、自分の頭も良くならないといけないから良くなっていっただけで。組み立てられる説明書と材料がパッと来るので、それを2年間分、1週間単位でスケジュールに刻んでいくんです。これをやって、ここでビデオを出して、どれくらいの再生数が取れて、こういう予算を持ってやっていけば、2年後にそれになれる可能性が出てくるよね、みたいな」

ムーブメントは結果として起きるのか? 作れるのか?

さらに、BAD HOPは2024年2月19日、東京ドームでラストライブ『BAD HOP THE FINAL at TOKYO DOME』を開催し、解散。その後、YZERRは起業家としても注目を浴びる存在となっている。

増井「ビジネスパーソンも、仕事をやる上で、最後結果を出しに行くってことがあるんだけど、お話を伺っている中で、最低限「自分自身でできる下準備」がきっちりできている人たちの中に、最後勝利が転がるよっていう。ノリだったり、運だったりの話ではなく、アーティストとしてだけじゃなくて、ビジネスもそうだけど、いろんな手を打ってあった中での一つが、最後は神のみぞ知るとこに行くんじゃないっていうことですよね」

YZERR「もう自分でやれることはないとなったら、あとは、もう流れに身を任せるしかないな、って。それが全部はまった瞬間だなとは思います」

増井「それで言うとムーブメントってよく言うじゃないですか。HIPHOPがこれだけ大きくなったのって、BAD HOPの影響だと思うんです」

YZERR「商業的に」

増井「今の若い子たちが元々音楽で訓練されて、音楽の素養があってというミュージシャンじゃなくて、要するに自分が生きた環境の中で音楽を使って自分を表現するってことができるっていうのの見本になったのが多分BAD HOPなんですけど、それがムーブメントとなったから、今HIPHOPは盛り上がっているけど、このムーブメントって作ろうとして作れるものなのか、それとも結果起きてるものなのかでいうとYZERRさんはどっちだと思います?」

YZERR「責任だと思っています」

増井「責任」

YZERR「誰か一人が本当に熱量を持って変えていく。すっごい例えが悪いですけど、自分一人だけだったら「別に死んでもいいな」って思ってもいいっていうような覚悟だと思っています。何かをやるときって、自分のためにやることと、自分だけのためにやること、人のためにやることの3択だと思うんですよね。でも、それって言葉の裏を返してみると「やってあげたよ」っていうような感情が生まれてしまうことがあると思うんです。利他的に見えたら利己的なものかなと思ったりするんですけど、自分だけのためにやるっていうのは、自分自身にプラスになるメリットのあることをやると。これ、何も悪いことではないと思うんだけど、他者に広がらないことがあるなと。その自分のためにやるっていうのをはっきりと言い切れる。それは、そういう人たちを、例えば僕で言うと、BAD HOPのメンバーが、普通に働いて、朝行きたくない仕事に行って、辛い仕事をするのを見るのであれば、自分のために頑張る。そうすると、彼らの人生にとってプラスを与えられたメリットの分っていうのが自分の価値だと思ってるんですよ。この差分が。この差分をどれほど他者に対して与えられるか」

増井「なるほど」

YZERR「そこをやる上での覚悟とか責任、僕が見たHIPHOPを勘違いしない形で、日本でムーブメントを起こす。これ、すごくやり方を雑にしたり、おちゃらけてすごいデカいムーブメントにするのは、はっきり言って簡単なことだと思うんですよ。でもそれはいわゆる美的センスの話だと思うんです。この美的センスを崩さないで、ちゃんとしたものをでかくしないといけない。けれども、一般の人たちにそれが通じない、わかってもらえない。だからちょっと崩さないといけない。ふざけないといけない。いわゆるわかりやすい一般の層に寄せないといけない。これを一般の層にしか寄せないっていうものだけだったら、これはカルチャーとは言わないと思うんです。ムーブメント、ただのブームで終わってしまうことだと思うんですけど、これをうまくどんだけバランスを持ってやってるかやってないかだと、最終的な結論って全然違うと思うんですよ」

増井「はい」

YZERR「で、結果的に一般の人には広めるけども、本当に広めたいもの、本当に自分自身がカルチャーとして残していきたいもの、それを自分のためにやるんだっていうことを、死にものぐるいで、さっき言ったようにやるんだっていうのをミックスさせて、すごいバランスのいい形で時折どっちにも寄っていくってことをやりながら、でかくしていくっていうのが、本当にゼロの形から一段ずつ積み上げていく上では大事なことなんだろうなと思いますし、修羅の道だなと思いますけど、必要だなって思いますよね」

増井「すごいよなぁ。だから前に道がないのを、YZERRさんの後ろに道ができてるっていうのは、そういう思想もありながら」

YZERR「自分だけのためにBAD HOPが囲おうと思ったら全然囲えたんですよね、マーケット自体。よりもうちょい開放していくこと。それで自分ができなかったことを、次の世代が成し遂げてくれたら、それは自分自身もそこに関われたし、やれたよねっていうことだと思うんです。そうするとちょっと慈悲みたいな心も出てこないといけなかったりするわけだと思うんですよね。自分だけの利益ではない。そうすると自分のためにやらないといけない。人のためにもしやってたら、なんであいつら返してくんないんだとか、こんだけやったのにって言葉がもしかしたら出ちゃう可能性もある。そういう感情は一切心の中から排除するっていうのは、そういうのを作る上でちょっとずつですけども必要なのかなと個人的には思いますけどね」

『FORCE MAGAZINE PRESENTS FORCE FESTIVAL』を実現させた泥臭さ

そんなYZERRといえば、2024年に「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」に選出。その紹介文は「ラッパーから起業家へ」。ラッパーとしてではなく、起業家としての選出だった。

また、2025年10月3日・4日には、主催するHIPHOPフェス『FORCE MAGAZINE PRESENTS FORCE FESTIVAL』を横浜アリーナで開催したことも記憶に新しい。このフェスの実現には、想像を超える泥臭さが隠されていた。

増井「まず何がすごいって思ったかっていうと、本当に日本なんだろうかって思ったわけですよ。それはラインナップもそうだし、体験も。アメリカに行かなくても、HIPHOPってこういうことだよねっていうのを、本物の体験をさせてもらえてる状態だったわけですよ。で、それがSNSでも当時やっぱりこのすごいバズ生んだのはFutureとかね。ありえないわけじゃないですか。だって日本に来るなんて」

YZERR「ありえないですね。今のFutureはありえないですね。昔も一回来たことあるんですけど、今のFutureが来るってことは絶対ありえない」

増井「ありえない……ってなるんだけど、これって僕聞いた話によると、YZERRさんが全てキャスティングしてるっていうか、ブッキングしてるっていうか」

YZERR「そうですね、人を介してもありますけど、基本的には自分自身で行ってますね」

増井「これ、どうやってあのメンツが集まるんですか? そもそも」

YZERR「もう気合いですね」

増井「やべえヒット出す人って、最後気合いって言うんだよな」

YZERR「気合いなんですよ。最後は。もうほんと気合いですね、僕。普通、話さなければ「俺、知り合いだぜ」みたいな格好つけられると思うんですけど、個人的にそういうのあんま好きじゃないんで。最初はライブのアフターパーティーとかの席の権利とかを買うんです。100万とか200万で。この話すると「相当ぶっ飛んでるね」みたいな「ちょっと規格外かな」って思われるかもしれないですけど、彼らはその数倍規格外ですから。「3時に来るよ」って言って来たの朝5時半過ぎとかですし、それまでずっと待ってるんですよ」

増井「YZERRさんが!?」

YZERR「はい。もちろん何者でもないじゃないですか。それを待って、さすがにきついなみたいな。もうこんな外にずっと出てて、足も疲れて……」

増井「外?」

YZERR「外でも待ってますよね。スタジオの前で10時間とか待ってた」

増井「出待ちってこと?」

YZERR「そのスタジオに知り合いが行くからって言ったので「俺もついて行かさせてくれ」って言って、スタジオの中じゃない外で3日間待ってました」

増井「会うまで?」

YZERR「はい。きついんですよ。シンプルにコンクリートとかに10時間とか。途中でちょっと体勢を変えていくっていうやつあるじゃないですか。で、ちょっと挨拶して顔を覚えてもらって。その後マネージャーとかと話してみたいなのを、毎日繰り返すっていう作業ですよね。たぶんできないと思うんですよ、みんな絶対それ。何の伝手もないんで。伝手もあったらありますけど、そんなの全然ないんで」

増井「マジでそれは気合いと根性だ。それで、この錚々たるメンツを口説きに行ったってこと?」

YZERR「そうですね、完全に」

増井「これは真似できないですね。(中略)YZERRさんは努力しているつもりはないかもしれないけど、一般的にはすさまじい努力、すさまじい準備が……。だって3日間外で10時間立って、朝まで待つ人なんて普通いないじゃない」

YZERR「まあそうっすか。てか、まずそもそもみんな行けないと思うじゃないですか」

増井「まあそうね。行動にも移らないよね、そういう意味では」

YZERR「行けるんすよ。信じてないからかもしれないですけど、行けるんです」

増井「この番組、ビジネスパーソンの方に向けて発信しているんですけど、このYZERRさんが思う勝てる人と勝てない人の分かれ目のポイントって、何があると思います?」

YZERR「難しいですね、何を勝ちと取るか。それが金銭的な勝ちなのか、それとも美学としての勝ちなのかっていうこともよりますけど、勝ち続けることに関してわかるなと思うのは、勝ち続けるっていうことは土俵が1つ上がった時に、今まで積み上げてきたものがゼロになる感覚があって。それをずっと更新し続けないといけないと思うんですよね。で、結果的に自分自身のことをパッと振り返った時に、例えば、今までのキャリアがあったり、プライドがあったりすると、先ほど言ったようにアメリカ行って、そんな何十時間も立って頭を下げてって正直恥ずかしいですし、悔しい思いもしますし、ちょっと情けないなみたいな。相手にされないし。でもそれをやっぱり恥ずかしいって思っちゃうのって、自分自身におごりがあるからだと思うんです。それって自分自身を何者かだと思ってるからだと思うんですよ。でもそういう自分自身は何者でもないですし、次のステップがあったら、また次のステップっていうのを繰り返してるだけなんで。そうするとずっと初心者みたいな。ラップのスキルでもそうですけど、スキルが上がると全然違うんですよ。そうするとまた素人なんですよ。小学生から中学生になって高校生になって、やる勉強が違うようなもので。勝ち続けるっていうのは、一つのところに留まらないで、ずっと上を見続けるっていうことだとは思いますね」