Spotifyは昨年10月、世界三大メジャーレーベルなどと提携し、「責任ある」AI音楽製品を開発する計画を発表。Music Business Worldwide(MBW)は責任あるAIに重点が置かれるこの発表の中に、スーパーファン向けプランなどと結びつく可能性のある新たな収益源の基盤を築いていることを示唆する要素がいくつか見受けられると指摘した。

Spotifyは、この協業による製品は「レコード会社、流通業者、音楽出版社との提携」「参加の選択」「公正な補償と新たな収益」「アーティストとファンのつながり」という4つの原則に基づいて開発されると表明。従来の再生回数に基づく支払いモデルを超えた、新たな収入を生み出す可能性のあるAI機能や、スーパーファン向けのインタラクティブなAI機能の導入につながる可能性が示唆されている。

三大メジャーは、いずれもSpotifyの発表と同日に声明を発表しており、SpotifyのAI開発アプローチを公に支持し、事前のライセンス契約の重要性を強調していることから、実質的な商業交渉が既に進められていることがうかがえる。Spotifyは高価格帯プランの一部となり得る新たなAI搭載機能の立ち上げに向けた、大きなハードルを乗り越えたようだ。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「「責任あるAI」という言葉だけを聞くと、技術倫理の話に思えるかもしれない。けれど今回の発表は、Spotifyが音楽サブスクの稼ぎ方を「ひとつの料金で全部聴き放題」から、「用途や深さに応じて料金が分かれる」モデルへ組み替えていく宣言でもある。

海外で展開中のオーディオブック分野で、同社はすでに重ね売りの仕組みを試している──月15時間までの聴取枠がPremium料金に含まれ、それ以上聴きたい人は追加プラン「Audiobooks+」や1冊単位の買い足しで対応できる。

日本ではSpotifyのオーディオブック自体が未提供のため馴染みは薄いが、同じ発想をAI機能にも持ち込める余地が出てきた。「
公正な補償と新たな収益」を掲げた4原則は、メジャー3社と独立系のMerlin・Believe(仏拠点の音楽企業)が同日声明で支持し固まっている。

コアなファン向けの高価格プランがAI機能を入り口に動き出していく流れは、エンタメ全体の課金モデルを考えるうえでも見逃せない試行錯誤の現場になっていく。」