家で楽しむエンタテインメントといえば雑誌、TV、ラジオだった時代から、今ではYouTubeにTikTok、NetflixやU-NEXTなどが全国どこでも楽しめるだけではなく、ラジオもエリアフリーで楽しむことができたり、雑誌も電子で読むことができたり、その選択肢は格段に広がった。

そんな中、コンテンツ愛で溢れるテレビ東京出身の人気プロデューサー・佐久間宣行は、常に時代に合ったプラットフォームを生かして面白い企画を生み出そうと画策している。

『ゴッドタン』『あちこちオードリー』など人気バラエティの生みの親で、パーソナリティも務め、「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」、YouTubeチャンネル『佐久間宣行のNOBROCK TV』の登録者数は320万人超えなど多くのバラエティ・お笑い好きから支持を集める佐久間の話は、これからのコンテンツ業界の未来にとって参考となるに違いない。

佐久間にコンテンツの未来について質問を投げかけると、話題はラジオからVTuber、AIまで多岐に渡った。

アルゴリズムに面白さは宿るのか

──佐久間さんはテレビ番組に加え、近年はNetflixやYouTube、ラジオなど、さまざまなプラットフォームで活動されています。今一番気になっているプラットフォームはなんでしょうか。

佐久間:悩んでいるのは、縦型動画ですね。縦型動画って、正直いまはアルゴリズムをハックしたような作品が多い気がしていて。アルゴリズムを無視して作るのはリスクが高いから、みんなそうしているんだろうけど。
僕は、アルゴリズムにハマりつつ面白いものを作れるのか、それともアルゴリズムを外しても見てもらえるものが作れるのか、その両方をなんとなく注視しています。可能性があるのはどっちなんだろうな、と。

──たしかに、今はアルゴリズムを前提にした宣伝や拡散が主流です。とはいえ、縦型動画の視聴が広がるなかで、そこから新しい”面白いコンテンツ”が生まれてきたら面白いですよね。

佐久間:その気持ちはすごくあります。それって、どんなコンテンツなんだろうなと考えています。


佐久間宣行(さくま・のぶゆき)
1975年11月23日生まれ、福島県いわき市出身。テレビプロデューサー。1999年にテレビ東京へ入社し、「ゴッドタン」「あちこちオードリー」などを手がける。2021年3月に同局を退社し、現在はフリーで活動。Netflix「トークサバイバー!」シリーズ、DMM TV「インシデンツ」「LIGHTHOUSE」「罵倒村」「デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ」などの企画・プロデュースを担当。ニッポン放送「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」でパーソナリティも務める。YouTube「佐久間宣行のNOBROCK TV」のチャンネル登録数は320万人(2026年5月時点)。


──アメリカでもYouTubeの存在感がさらに強まるなか、ショート動画を取り巻く環境も変わってきています。今、その変化をどう見ていますか。

佐久間:いまアメリカでは、YouTubeのショートドラマが流行っているんですよね。2秒ぐらいで人が死ぬドラマとか(笑)。一方でTikTok はまだまだユーザーを増やそうとしていて。だからバズるコンテンツとか、偶然の出会いを生み出すAIで誰にでもスターになるチャンスを作ろうとしてるけど、YouTube は誰にでもスターの時代が終わりつつあって、長くユーザーを滞在させようとしてますよね。メディアのフェーズが異なる感じがします。

──その違いが、YouTubeでは反応がなかったものがTikTokではバズる、という現象にも表れている気がします。

佐久間:TikTokのAIは、とにかく優秀なんですよね。たぶんランダムなものを取り入れるのが得意で、だから新しく始めた人にもチャンスがある。一方でYouTubeは、おすすめ機能が進化していっていて、新しい出会いというより、興味を深掘りさせる方向に向かっている気がします。だから、爆発的なコンテンツは生まれにくくなっている感じがありますね。

──ご自身がショートコンテンツを作るなら、どこで試してみたいですか。

佐久間:YouTubeだったら、いまのところロングでいいかなと思っていて。ショートをやるなら、TikTokでどうなるかを見てみたいですね。
いま、テレビの視聴者の方がマニアックかもしれない

──MIXIの木村弘毅社長とMIXIサブチャンネルで対談していただいた時に、「今は普通の人はYouTubeを見ていて、テレビはオタクが見ているから、新しいことや変わったことはテレビの方がやりやすい」と仰っていたのが印象的でした。

佐久間:昔はテレビがいわば量販店の洋服で、ファッションショーっぽいものはYouTubeとか他の場所でやっていた。でも今は逆で、ファッションショーっぽいものをテレビでやって、YouTubeではメジャーなものをやった方が、メディアのフェーズとしては合っている気がするんです。

──Netflixでは2022年に始まった「トークサバイバー!」以降も、「LIGHTHOUSE」(2023年)、「罵倒村」(2025年)、「デスキスゲーム 〜いいキスしないと死んじゃうドラマ〜」(2025年)と次々に制作されていますが、Netflixはどういった変化がありますか。

佐久間:Netflixのフェーズも変わっていますね。4年前に「トークサバイバー!」をやった時は、「お金を払って観に来てくれる人」をすごく意識したんです。でも数年でNetflixのプレゼンスが上がって、その一方でお笑いはまだそこまで多くない。だから逆に、お笑いを見慣れていない人のためのお笑いを作らなきゃいけない時期に変わってきていると思います。

──そうした変化のなかで、テレビ向けのコンテンツ作りはどう変わっていますか。

佐久間:今は、わざわざテレビをつけてまで「面白いものを見たい」と思っている人とか、「推しを見たい」人に向けた番組が多いですね。ながら見の人は、リビングで地上波を見ているだけだと思うんですけど。一方で配信については、TVerも含めて、まだ視聴体験の面で改善の余地があると感じます。
あの不便さでも見ているってことは、やっぱりベースはオタクなんですよね。昔のテレビは「偶然の出会いのチャンネル」で、そこに美徳がたくさんあった。でもその要素は、生放送やゴールデンの番組にはまだ残っていても、それ以外はかなり専門店に近くなっている。だからテレビ自体が、偶然の出会いを演出するものではなくなってきていると感じます。

“語れる番組”が生き残る時代

──子どもの頃に夢中になったテレビの面白さと、いまご自身が作るテレビ番組の面白さは、どう変わったと思いますか。

佐久間:もちろん予算は大きく変わっていますけど、炎上も含めて、昔より作ったものに無責任ではいられない時代になりました。そうすると、作り手の顔が見えることが結構大事なんですよね。
作り手の顔が見えないと出演者の責任になってしまう。でも、こういう意図で作っているんだと分かると、出演者も本気を出せる。だから番組も、記名性が大事な時代になってきていると思います。

──バラエティのディレクターや、ドラマの脚本家が自分の言葉で発信することにも意味が出てきている、と。

佐久間:良し悪しはもちろんあるけど、正直、「語られる」コンテンツは広まって、「語れない」コンテンツは広まっていかない状況になっていると思います。みんなが一番語れるのって、何だと思いますか。

──恋愛リアリティショーや、オーディション番組でしょうか。


佐久間:一番語れるのは、※サバイバルオーディションですよ。あれだけバズるじゃないですか。コンテンツを使って、自分の語りたい気持ちを発散できるものが、当面は見られるものなんだと思います。もちろんアニメやドラマのような完全なフィクションは別かもしれないけど、バラエティや情報系で大きく見られるものは、語りがいのある番組になっている気がしますね。

※多くの候補生が番組からデビューや優勝を目指して歌、ダンス、パフォーマンスなどを競い合う中で、少しずつ脱落していくオーディション番組。「サバ番」とも呼ばれる。

──視聴者が自分ごと化しやすくて、それを語りやすい構造まで設計されているんですね。

佐久間:そうですね。あとは率直に言うと、賛否両論がちゃんと生まれるように作られている。※アテンション・エコノミー的なものの方が、今は見られている感じがします。でも、僕はそれに負けないものを作りたいと思っています。

※情報があふれる環境のなかで、人々の「注目」そのものが価値を持つ考え方。SNSやアルゴリズムとの相性の良さから語られることが多い。

──その視点で、いま「これはうまくやっている」と感じるコンテンツはありますか。

佐久間:僕が好きなのは、僕のYouTubeサブチャンネルにも出ている上田っていう作家の「うじとうえだ」というYouTubeですね。元芸人の2人と上田で、お酒ばかり飲みながら過激な旅しているんですけど、すごく見られている。あれは昔のテレビのやんちゃさと、今のYouTubeのコミュニティ感の両方を持っているから、多くの人に受け入れられているのかなと思います。

──先ほどの「語れる」という文脈で言うと、コメント欄も盛り上がってますね。自分のことを書いている視聴者がいたりして。

佐久間:そういう人もいるし、推し活感も適度に入っていますよね。

佐久間宣行がモンストで何かを企画するなら?

──MEDIAMIXIはMIXIが運営するメディアですが、MIXIの代表的なゲーム「モンスターストライク」はプレイされたことがありますか。

佐久間:あります。新しいものが好きなので、ローンチされてすぐにやってみました。面白かったです。ただ、当時の僕は一緒にやれる仲間があんまりいなかった。バリバリの会社員で、歳も40前後だったので年齢的にも周りにプレイヤーが少なかったんですよね。

──モンストは最近はアニメなどのIPとコラボして海外にも進出しています。ある意味でモンストが海外に日本のコンテンツを紹介するプラットフォームとしても機能してきている状態ですが、もし佐久間さんがモンストをプラットフォームとして何かコンテンツを作るとしたら、どんなものをやりたいですか?

佐久間:もうすでに完成されているから難しいですね。安直に考えるとテーマパークっぽいものになっちゃうけど、そうだなぁ…モンストをやっている人だけ入れる飲み屋とか欲しいですね。ソロで入っても、普通に誰かと遊べる場所。

──いいですね。

佐久間:「ランクが〇〇以上だったら入れる」みたいな、ドラクエでいうルイーダの酒場みたいな場所。空港のラウンジみたいな雰囲気で、飲み放題だといいですね。

──しっかり特典もあって(笑)

佐久間:プレイしているからこその特権性は欲しいですね。そんなのがあったら面白いと思います。

娘に教わったVTuber、娘に教えたSF

──佐久間さんはお子さんの影響もあり、「ピラメキーノ」(2009年〜)のような番組が出来たと過去に仰ってました。ご家族の影響で生まれるコンテンツにも変化があるかと思いますが、お子さんとは最近どう言ったお話をされていますか?

佐久間:子どもとは、新しいカルチャーをお互い教え合っているんですけど、最近、子どものおかげで詳しくなったのはVTuberですね。一緒にROF-MAOのライブに行ったり、VTuberの曲をラジオでかけたりもして。星街すいせいさんがラジオにゲスト出演したんですけど、それも完全に娘のおかげですね。

──逆に、佐久間さんからお子さんに勧めたものはありますか。

佐久間:娘に教えたのはSFですね。うちの娘は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を原作も読み込んで、公開初日に観に行くくらいSF好きなんです。そんなふうに、お互い教え合っている感じですね。

──VTuberにハマったことは、今後のコンテンツ作りにも影響しそうですか。

佐久間:VTuberはやっぱり本人のパーソナリティもあるし、ここまでいろんな人たちが出てくると、そんなに簡単にうまくいくようなジャンルじゃないなと思います。

──難しい部分と面白いなと思うところ、それぞれ教えていただけますか。

佐久間:VTuberは、熱狂の作り方が面白いですね。それと同時に、その人自身のパーソナリティと高度なマーケティングの両方が必要になる。パッと見では遊びっぽく見えても、そんなに簡単ではないんですよ。NOBROCK TVの中で「罵倒VTuber」の企画をやったこともあるんですけど、やりながら、一朝一夕では分からないなと思いました。

──先ほどの対談でもおっしゃっていた、「YouTubeではファンダムが強い人が人気になる」という構造に、VTuberもしっかり乗っているんですね。

佐久間:そうですね。だからコンセプトをしっかり作って、最初の戦略を立てないと、あっという間に興味を持たれなくなる。

──視聴者がどういうふうにハマっているのかも気になります。

佐久間:10代、20代にとっては、僕らが30年前に聴いていたラジオやオールナイトニッポンに近い感覚じゃないかなと思います。長い時間聴いて、その人と同じ時間を過ごすことへの気持ちがすごく強い。

──誰かと長い時間を一緒に過ごしたいという感覚は、すごく普遍的なものなんですね。

佐久間:それに、お互い顔を見せないという部分もありますよね。今だと、生身の人間よりキャラクターの方が愛せる、ということもあるのかもしれないです。

AI時代に残るのは、人柄がこぼれるコンテンツ

──佐久間さんは昔からラジオ好きとして知られていますが、ここ数年でラジオはあらためて再評価もされています。コンテンツとして、これからどこがより面白くなっていくと思いますか。


佐久間:いま、いろんなメディアが、AIもそうだし、フェイク画像もそうだし、嘘を疑わざるを得ない時代に入っていると思うんですよ。イデオロギーもたくさんある。そのなかで、VTuberもラジオも共通しているのは、「生で長く話す」ということなんです。生で長く話すって、もちろん完璧に役を通せる人がいたら嘘もつけるけど、基本的には嘘がつきにくくて、人柄がこぼれ落ちるものなんですよね。それが、VTuberにもラジオにも共通する一番の魅力だと思っていて。その部分が、メディアとして生き残れる一点なんじゃないかと思います。

──そういった「確からしさ」みたいなものを皆さん求めている。

佐久間:そうそう。だからラジオの通販は物が売れるんですよ。それはおそらく、信用がメディアに付いているからだと思う。YouTubeについても、YouTubeだけでずっと全部を見せているYouTuberに対しては、視聴者もいい意味でも悪い意味でも信用を持っているんじゃないかなと思います。

──AIを使ったコンテンツも大量に生まれ始めていますが、そのあたりはどう見ていますか。

佐久間:仕掛けとかギミックよりも、もう一回、作り手の想いみたいなものとか、キャラクターを愛するというシンプルなところに戻ってくるような気がしますね。そういう時代に突入すると思います。