ソニーグループは、米テキサス州オースティンで開催されたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2026で、「Create Infinite Realities」と題したスペシャルイベントを開催。3月15〜16日の2日間にわたり6つのセッションを集中開催し、最新のバーチャルプロダクション技術から空間キャプチャソリューションまで、実例を交えながら紹介した。

セッションの1つである「Dots Verse × Sony: Reality Beyond Physical and Virtual」では、世界的ダンサーのケント・モリをゲストに、ソニーイノベーションスタジオ(SIS)シニアバイスプレジデント兼スタジオ代表の中山雅貴氏がモデレーターを務め、ソニーが開発した空間・人物の3Dキャプチャ技術と、それがエンターテインメントおよびクリエイターの権利をどう変えようとしているかについて議論した。

体の中の「ドット」をコントロールし宇宙と繋がる

モリは、マドンナ、クリス・ブラウン、アッシャー、ニーヨ、シアラ、チャカ・カーンといったトップアーティストの専属ダンサーを務め、2009年にはマイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』オーディションに合格した実績を持つ。「どうすれば偉大なダンサーのように踊れるか」と模索する中、彼は体の中に一つの点(ドット)を見つけ、その一点をコントロールすれば、まるで宇宙の振動と繋がっているかのように、体全体が自由に動き出すことに気付いた。その数カ月後にマドンナのダンサーオーディションに合格。人生が変わった。モリは「あの”一点”を見つけたことが、全ての出発点だった」と話した。

中山氏は「彼(モリ)に最初に会ったとき、自分は筋肉や骨を動かして踊っているのではなく、体の中の点を動かしていると言った。それを聞いて、ソニーのポイントクラウド(点群)技術と何か繋がるものを感じた」と振り返った。

「振付に権利を」──ダンスが新産業になる日

こうして両者は、SISの点群技術「AtomView」を使用して取得した空間データと人物データを組み合わせ「世界文化遺産である二条城の中で、スニーカーを履いたモリが踊る」という、現実にはあり得ない組み合わせの映像を作り上げた。モリはソニーのパフォーマンスキャプチャ技術について「この革新的な技術は動きを驚くほど正確に捉えることができ、これこそが未来だと思った。自分のロングヘアの毛先まで鮮明に描き出している。動きをデータとしてキャプチャできるようになった今、振付を作った人が初めて”権利”を持てる時代が来ようとしている。これは革命だ」と目を輝かせた。

中山氏も「彼(モリ)から、この技術がこれまであまり認識されてこなかったダンサーたちの権利を守る可能性を秘めているということを学べたのは、われわれにとって本当に目から鱗が落ちる経験だった」とコメント。ソニーは、クリエイターやアーティストを支援していきたいと願っており、「われわれが技術を提供し、アーティストはその技術への要求を高め続ける。彼らのハードルは非常に高いが、そのプレッシャーがわれわれを前進させる。互いを高め合う関係でありたい」と意欲を示した。

著作権法では、ダンスの振り付けは「舞踏」に該当すると考えられ、原則的に著作物であると考えられる。ただ、個別事案への適用が難しく、ライセンス体系の確立にも至っていないのが実情だ。この点群技術により、ダンサーらの動きをデータとして保存・保護することで、自らの創作物に対する著作権を持つことが可能となり、業界全体に革新的な変化がもたらされることが期待される。