グーグルの持ち株会社アルファベットの株主であるフィル・ローゼン氏は10月30日、スンダー・ピチャイCEOら取締役・幹部13人を相手取り、株主代表訴訟を起こした。AIモデルの訓練方法を巡り、受託者義務違反、不当利得、証券取引法違反を訴えている。

訴状では、被告らが権利侵害を認識した上で、著作権で保護された作品や音声を無断で使用してAIを構築するという「違法な事業戦略」を採用したと主張。この戦略は、合法的なライセンスを得る代わりに、後に権利者から提訴された際に損害賠償を支払うだけで済むように、慎重に練り上げられたものだと指摘している。

また、著作権者の同意を得ずにYouTubeから著作権対象の作品を収集することで、コンテンツIDの「著作権者の利益のための基本方針」を損なっていると強調。
株主総会招集通知において、市場や株主に、AI開発において各種法律を順守していたと誤解させる記述があったなどと非難している。

原告は、裁判所から被告らに、アルファベットへの損害賠償金の支払い、報酬の返還、ガバナンスの変更を命じるよう求めている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「この訴状が鋭いのは、無断学習を「ミス」ではなく「設計された事業戦略」と呼んだ点だ。ライセンス料を払うより、訴えられてから賠償金を払う方が安い。そういう計算を経営陣が意図的に選んだのではないか、という主張である。音楽業界が生成AI各社に向けてきた批判と同じ構図を、今度は株主が役員の責任問題として法廷に持ち込んだわけだ。訴状にはもう一つ、気になる論点がある。権利者の音源を預かって保護するはずのYouTubeで、その音源が許諾なくAI学習に使われたという主張だ。もっとも、これはまだ原告の疑惑の段階で、グーグル側にも利用規約を根拠にした反論の余地がある。ただ、役員が個人として責任を問われる可能性が出てくれば、どの会社も学習データの出どころや権利確認への姿勢を変えざるを得ない。権利処理が経営判断の真ん中に据えられるきっかけになるかもしれない訴訟として、音楽業界も行方を見守ることになるだろう。」