イラストレーターのナガノが描く『ちいかわ』の海外展開が、英語圏で本格化している。10月1日には海外向け公式YouTubeチャンネルで、アニメの英語吹き替え版の毎週配信が始まった。英国ロンドンの百貨店ではポップアップも開かれている。国内では映画が興収184億円を超え、韓国でも興行ランキングの首位に立った。映画で頂点を迎えたように見えるIP(キャラクターや作品などの知的財産)が、次にどこへ向かうのかを整理してみよう。
X発のマンガが「キャラクター」として広がった
『ちいかわ』は、ナガノが2020年からX(当時のTwitter)で連載しているマンガだ。小さくてかわいい生き物たちの、楽しくも切なく、ときにハードな日々を描く。2022年4月からはフジテレビ系の情報番組『めざましテレビ』内で約1分のアニメが放送され、YouTubeでの見逃し配信は6月時点で総再生4億回を大きく超えていた。
特徴は、物語より先にキャラクターの姿が広く知られたことだ。ライセンス(キャラクターを商品などに使う権利を他社に許諾し、対価を得る仕組み)は、「コウペンちゃん」なども手がけるスパイラルキュートが管理しており、売り方はサンリオなどのキャラクタービジネスに近いと指摘されている。6月には「日本キャラクター大賞2026」でグランプリに選ばれ、3年連続の受賞で殿堂入りした。
7月24日に公開された『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』は、興行通信社の集計で10月25日までに動員1265万人、興収184億円を超えた。
アジアは映画まで、欧米は動画と玩具から
海外の状況は地域で大きく異なる。韓国語や中国語の吹き替え版がすでにあった東アジアでは、映画も劇場でヒットした。香港では8月6日に公開され、台湾では9月時点で興収が約1億5000万台湾元(約7億4000万円)に達し、年間の興行トップ10に入ったと報じられている。韓国では9月30日に公開され、韓国映画振興委員会の集計で10月27日まで14日連続の首位となり、累計動員は228万人を超えた。
一方、欧米はこれから入口をつくる段階にある。英語吹き替え版は今回が初めてだ。海外のライセンスは、スパイラルキュートがロサンゼルスに設けたSpiralcute International(スパイラルキュート・インターナショナル)が担う。同社は玩具会社のJazwares(ジャズウェアーズ)を、アジア以外の地域のマスタートイパートナーに選んだ。玩具の展開と流通をまとめて任せる中核の契約先で、同社による初のちいかわ玩具は、この秋からアジア以外の市場で売り出される。
これにあわせて、ロンドンの百貨店セルフリッジズとハロッズで、ちいかわと猫のキャラクター「mofusand(モフサンド)」のポップアップが開かれた。ちいかわの会場はセルフリッジズのオックスフォード・ストリート店だ。
映画はゴールではなく入口
こうした広げ方は、サンリオが歩んできた道と重なる。サンリオは「ハローキティ」に加え、「クロミ」や「マイメロディ」も前面に出す複数キャラクター戦略で、飲料や外食、コスメ、アパレルなど幅広い分野のライセンス売上を伸ばしてきた。2022年11月には、ちいかわとサンリオのキャラクターが共演する「ちいかわ×サンリオキャラクターズ」も発売されている。
映画のヒットは国内の到達点に見えるが、IPビジネスとして見れば、海外ライセンスを広げる入口でもある。注目したいのは、作品が届く順番の違いだ。日本では朝の情報番組での放送とXの連載がキャラクターに日常的に触れる場となり、その積み重ねが映画の動員につながったとみられる。
英語圏でその役割を担うのが、YouTubeの吹き替え版だ。玩具や雑貨で見た目に出会った人を、切なくてハードな物語まで連れていけるか。英語版の再生数と玩具の売れ行きが、その最初の手がかりになる。














