「トミカ」や「人生ゲーム」で知られる玩具大手のタカラトミーが11月4日、インディーゲームのパブリッシングブランド「ENJOYN GAMES(エンジョインゲームズ)」を立ち上げた。第1弾としてPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」向けに3作品を11月から順次発売する。しかしなぜ、玩具メーカーがゲームを「売る側」に回るのか。

インディーゲームの「パブリッシャー」とは

インディーゲームとは一般に、大手メーカーの資本に頼らず、個人や少人数のチームが制作するゲームを指す。Steamのようなダウンロード販売の普及により、小さなチームでも世界に向けて作品を販売できるようになった。

ただし、ゲームを作ることと、多くの人に届けることは別の仕事である。宣伝や販売、翻訳、イベント出展などを引き受け、開発者が制作に集中できるよう支えるのがパブリッシャーだ。ENJOYN GAMESも国内外の開発者と組んで販売やプロモーションを支援するとしており、開発中タイトルの持ち込みやパブリッシングの相談も受け付けている。

第1弾は「誰かと遊ぶ」3作品

11月10日に発売される『人狼バーガー』(880円)は、合同会社uraconが開発した「正体隠匿系」のパーティーゲームだ。仲間に紛れた裏切り者を会話と投票で探し出す「人狼ゲーム」の一種で、最大6人が「店員」と「スパイ」に分かれ、全員で一つのハンバーガーを作る。崩さずに完成させれば店員の勝ち、失敗すれば議論と投票でスパイを探す。uraconは、鍋づくりを題材にした正体隠匿ゲーム『闇鍋人狼』を手がけてきた開発者である。

2026年第4四半期に発売予定の『Little Cheese Works』は、合同会社BUBBLE GUMによる協力アクションだ。ブラック企業で働くネズミの社員となり、最大4人でネコに見つからないようにチーズを運ぶ。ボイスチャットの声もネコを起こす原因になるため、ひそひそ声で連携する必要がある。本作は2023年、バンダイナムコグループが主催した第1回「GYAAR Studio インディーゲームコンテスト」でプラチナ賞を受けた。玩具業界の競合グループのコンテストで評価された作品を、タカラトミーが送り出す形だ。

11月14日発売予定の『Sloppy Forgeries』は、世界の名画を3分以内にマウスで模写し、正確さをピクセル単位で競う対戦型お絵かきゲームだ。「元に戻す」も「塗りつぶし」も使えない。米国の大学でゲームデザインを教えるジョナ・ウォーレン氏の作品で、原型となった2人対戦版は2018年に米国のゲームフェスティバル「Miami @ Play」で最高賞を獲得している。販売は開発元のPlayful Systemsが自ら手がけ、ENJOYN GAMESは日本国内のパブリッシングを担う。

発売にあわせ、『人狼バーガー』は人気配信者グループ「まじめにヤバシティ」(11月8日)と、「にじさんじ」のライバー6人(11月10日)による実況配信も予定されている。

玩具メーカーがデジタルゲームに乗り出す理由

タカラトミーは、旧タカラが1968年に発売した「人生ゲーム」に代表されるように、もともと「みんなで囲む遊び」をつくってきた会社だ。2023年には「人生ゲーム」の家庭用ゲームとして12年ぶりの新作となる『人生ゲーム for Nintendo Switch』を発売した。一方で、2016年に始めたデジタルカードゲーム『WAR OF BRAINS』は2018年にサービスを終えるなど、デジタル領域では試行錯誤も重ねてきた。

今回の動きの土台にあるのが、2024年5月に発表した「中長期経営戦略2030」である。同社は「おもちゃ」から「アソビ」へと事業領域を広げる方針を掲げ、「デジタル」や「玩具外収入」を重点戦略に据えた。玩具外収入の例には、デジタルゲームも挙げられている。2026年3月期の売上高は前期比8.1%増の2704億円と過去最高を更新しており、本業が好調ななかでの新たな一手といえる。

ブランド名の「ENJOYN」は、楽しむ(ENJOY)、参加する(JOIN)、人と人との縁(EN)を重ねた造語だという。3作品とも複数人プレイを主軸に据えているのも、このコンセプトに沿った選び方だろう。

自社IPに頼らない船出

注目したいのは、トミカやベイブレードといった自社の人気IP(キャラクターなどの知的財産)を使わず、外部クリエイターのオリジナル作品から始めた点だ。米玩具大手のマテルは2026年8月、約300人規模の「Mattel Game Studios」を設立し、ホットウィールやUNOといった自社ブランドのゲームを自ら手がける体制を整えた。これに対しENJOYN GAMESの出発点は、「共に作るパブリッシャー」を掲げる集英社グループの集英社ゲームズのように、新しい作品を外部の作り手とともに世に出すスタイルに近い。

まずは11月に発売される2作品が、実況配信をきっかけにどこまで遊び手の輪を広げられるか。そして持ち込み窓口から、どんな作品が生まれてくるのかに注目したい。