ホラー作家・雨穴にとって初の大規模展覧会『雨穴の変な世界展。』が、2026年10月23日、東京・天王洲の寺田倉庫 G1ビルで開幕した。開幕前日の10月22日にはプレス発表会・内覧会が実施され、雨穴のほか、株式会社闇 代表取締役副社長 CCO 頓花聖太郎氏、株式会社バーグハンバーグバーグ 代表取締役 長島健祐氏が登壇した。
本展は、『変な家』『変な絵』などの書籍、YouTubeの動画、Webメディア「オモコロ」の記事などで「おもしろくて、こわい」を追求してきた雨穴の世界を「まるごと」展示するもの。企画・制作は雨穴本人と、同氏が所属するオモコロを運営するバーグハンバーグバーグ、そして『行方不明展』『恐怖心展』『記憶汚染展』など累計50万人以上を動員する体験型展覧会を手がけてきた闇が担う。来場者自身が「変な世界」の住人になったかのような、没入体験を楽しむことができる。
闇の熱烈オファーで実現 画面の向こうの「変な世界」を全12エリアで立体化
最初に登壇した株式会社闇の頓花聖太郎氏は、雨穴の書籍や動画、オモコロの記事については、見たり聞いたりして楽しむものだったとし、そこに登場するものを実際に目の前で見る機会はこれまでなかったと説明した。『変な家』の間取り図、毎年お正月に届くおせち、オモコロの記事に登場する工作など「ずっと画面の向こう側にあった変な世界に、もし実際に入って歩くことができたら、とても面白いんじゃないだろうか。それがこの展覧会の出発点です」と語った。

闇は2023年から体験型の展覧会を数多く手がけており、雨穴に「一緒にやりませんか」とかなり熱いメッセージを送ったことから今回の企画が実現したという。頓花氏は雨穴の作品について「一つひとつ見ていってもとても面白いが、一堂に会することで本当に世界が立ち上がってくる」と述べ、雨穴を「この世界に住んでいる住人であり、案内人」と紹介した。
会場は全12エリアで構成され、ゆっくり回ると約90分かかる規模。商店街から始まり、『変な家』『変な絵』『変な地図』といった書籍の世界を立体として体験できるエリア、音楽ステージやおせちのエリア、オモコロでの工作実験などを経て、寝室を抜けると森へと入っていく。その先は、本展のために雨穴と闇が作り上げた新作ともいえる世界が広がっているという。

グッズのほとんどを雨穴自身がデザイン 長島氏「グッズという形をした雨穴の作品」
続いて登壇したバーグハンバーグバーグの長島健祐氏は、オモコロを運営する同社が2018年から雨穴とともに歩んできたことを紹介した。「雨穴さんといえば作家のイメージが強いかと思いますが、実は音楽制作やデザインにも非常に魅力的な才能をお持ちの方」と語り、その才能を詰め込んだのが本展のグッズだと説明した。

長島氏によると、グッズは満を持して60種を制作したという。通常は制作チームが企画・デザインを考え、本人は監修のみというケースが多いが、今回ほとんどのグッズを雨穴自身がデザインしたと話す。長島氏は「雨穴のグッズというよりも、グッズという形をした雨穴の作品だと私は思っております」とし、子どもから大人まで幅広い年代が楽しめるラインナップになっているとした。

テーマパークを作る夢を展覧会で実現 雨穴「不思議な世界を散歩してください」
本展のために書き下ろされた新曲が流れる中、雨穴が頓花氏、長島氏とともにステージへ。雨穴は「今すごく緊張しております。そして同時にすごくワクワクしております」と心境を明かし、続けて本展に込めた思いを語った。

「実は昔から遊園地を作りたいなと思っていました。遊園地やテーマパークを作りたいという夢を密かに抱いていたんです」。本展については、長島氏や頓花氏をはじめ多くの人と一緒に作った「テーマパークのような展覧会」だと説明した。

見どころを問われると、まず「この展覧会はとっても広い」と強調、「私が普段住んでいる世界をそのまま再現いたしました」と続けた。和室や洋室、森、謎の小屋まであり、「会場自体がひとつの世界になっております」。そのうえで「不思議な世界を散歩してください」と呼びかけた。
制作過程について頓花氏は、雨穴が物語や世界観、登場する生き物などを多くのスケッチとともに細かく伝えてくれたため、イメージをつかむこと自体はやりやすかったと振り返る。一方で「雨穴さんの世界は会議のたびにどんどん広がっていく」とし、制作メンバーは「またすごいアイデアが来たぞ、これはどうやって実現させるんだ」と、楽しみながら雨穴のアイデアを数多く受け止めてきたという。「僕たち自身も一緒に世界を作り上げたという感覚がすごくあります」とした。

雨穴は「今まで読者や視聴者の方には、2次元の画面を通して世界をご覧いただいていたんですが、今回は実際にその中に入って、この変な世界の住人になったような気持ちで楽しんでいただける場所にしていただいた」と語った。
商店街から家の中、そして森へ 雨穴が案内する会場
トークでは会場マップを映しながら、雨穴自身が各エリアを紹介した。

展示はエントランスのエレベーターを降りたところから始まる。最初のエリアは、雨穴が普段買い物をしたり本を買ったりしているという商店街。そこを抜けると大きな家の入口があり、「私の家をかなり忠実に再現しております」という雨穴の家の中を、ルームツアーのような形で巡っていく構成だ。
最初に出会うのは、『変な家』に登場する家を3分の1スケールで再現した展示。人よりも大きいほどのサイズの家を断面で見せる「輪切りの家」になっており、物語の重大なトリックにかかわる部分を横から確認できる。

家の中の仏壇は暗くなっており、覗き込むと何かがあるかもしれないと紹介された。続いて、栗原さんになりきって雨穴と電話をするシーンを撮影できるフォトスポットが用意されている。

その先には『変な家』を除く3冊の書籍コーナーが並ぶ。『変な地図』のコーナーでは、博物館のような空間にリアルなジオラマを制作しており、作中の世界を俯瞰的に楽しめる。

『変な絵』のコーナーについて頓花氏は「実際に作ってみたら、ちょっと怖くなっちゃったぞというくらいリアル」とし、本当にここで事件が起きたかのような緊迫感を感じられるエリアだと説明した。
『変な家2』のコーナーでは、作中に登場する11の家をすべて立体模型で再現。頓花氏は「一個一個が本当に美術作品のように精密に作られている」と話し、雨穴は「これぐらい作れたら嬉しいですけど、というニュアンスでお伝えしたものを完全に再現していただいて、びっくりしてしまいました」と感謝を述べた。

書籍のコーナーを抜けると、トークセッションの舞台にもなった音楽コーナーへ。会期中はステージの両脇にギターを持った雨穴が立ち、来場者が中央に立つことで「雨穴バンド」のボーカリストになれるという。ミュージックビデオも流れており、雨穴は「これまでと打って変わって楽しいコーナー」と紹介した。

その後は、肩の力を抜いて楽しめるエリアが続く。オモコロで雨穴が執筆してきた記事の制作物を並べたコーナーについて、長島氏は、オモコロで書き始めて8年ほどになる雨穴の過去作から「オールスター的な小道具」などを展示していると説明。毎年お正月に公開しているおせちに関する動画にちなんだコーナーもある。

さらに、雨穴が普段生活したり動画を撮影したりしている和室をそのまま再現した「雨穴のすみか」へ。頓花氏は「空間自体にも雨穴さんを感じるエリアになっている」と語った。

ここから先は、雨穴の家の外に出て「家の近くを歩いてみたら何があるんだろう」というエリアになる。頓花氏は「このエリア以降はあまり詳しくは解説できないので、ぜひ皆さんの目で体験していただきたい」と述べた。
ぬいぐるみは角まで再現 作品を知らない人も楽しめる工夫も
トークセッションでは改めてグッズも紹介された。長島氏は、雨穴に不気味さや怖さのイメージを持つ人もいるとしつつ、ぬいぐるみやカチューシャ、ステッカー、光るリフレクターのキーホルダーなど、子どもも楽しめて親も安心してプレゼントできるものを作ったと説明した。
特にこだわったのがぬいぐるみだ。各ぬいぐるみで4〜5個の試作を重ねたといい、雨穴は「よく見ていただかないと分からないと思うんですが、実は私、ちょっと角が生えております」と明かし、その「分かるか分からないか微妙なライン」まで再現したと語った。

トークセッションの最後、雨穴は「今回の展覧会は雨穴を知っている、動画や本を見ているという方はもちろん楽しんでいただけるものになっています」としたうえで、雨穴のことをよく知らない人や本を読んだことがない人も十分楽しめるよう、各コーナーに説明やストーリーを数多く用意したと説明。「お子様でもお年寄りでも楽しんでいただける空間になっております。もしお気が向きましたらお越しくださいませ」と呼びかけた。
バンドのギターは「雨穴のような存在」 会期中は「見えない壁の裏」に来るつもり
報道陣との質疑応答では、音楽コーナーでギターを持つ雨穴は本人なのかという質問に、雨穴は「雨穴のような存在です」と回答。「極限まで雨穴ですので、写真を撮っていただいたら私に見えると思います」と続けた。会期中に雨穴に会えるチャンスについては「気持ちとしては皆さんに会いたいと思っています」とし、「時々、もしくはしょっちゅう、見えない壁の裏とかには来るつもりでおります」と答えた。
来場者数の目標について頓花氏は、公表はしていないとしたうえで、長い会期のため多くの人に来てほしいと述べた。ホラーを手がける闇が加わったことでどのような怖さを盛り込んだのかという質問には、これまで展覧会を手がけてきたノウハウを活かして、メンバー全員が大ファンだという雨穴の世界観を作り上げることに力を尽くしたと語った。
おすすめの撮影ポーズを問われた雨穴は、ステージ上で実演。「感情を込めて歌っていることを、太ももの筋肉の張りで表現する」ポーズや、ロックなポーズなどを披露した。



展示を見るのではなく「住人」として歩く 細部まで作り込まれた会場
実際に会場を回ると、エレベーターを降りた時点で世界観が始まっており、展示室に入る前から一気に引き込まれる。書籍や、YouTube・オモコロで画面越しに見ていた部屋やアイテムを実際の空間で体験でき、展示を「見る」というより、雨穴の世界の住人として歩き回っているような感覚になる。一般的な展覧会とはまったく異なる体験だ。

展示は細部まで作り込まれており、何度見返しても新しい発見がありそうな密度を持つ。写真を撮りたくなる仕掛けやフォトスポットも随所に用意されていた。グッズのクオリティも高く、展示を見終えた後の余韻とともに手に取りたくなるラインナップだ。

雨穴が「おもしろくて、こわい」を追求してきた世界をまるごと体感できる本展は、ファンはもちろん、雨穴の作品に触れたことがない人でも楽しめる内容になっている。

開催概要『雨穴の変な世界展。』
会期:2026年10月23日(金)〜2027年1月17日(日)
会場:寺田倉庫 G1ビル(東京都品川区東品川2-6-4)
開催時間:10:00〜19:30(最終入場は閉館30分前まで)
主催:株式会社闇、株式会社バーグハンバーグバーグ
企画・制作:雨穴、株式会社闇、株式会社バーグハンバーグバーグ
協賛:ぴあ株式会社、寺田倉庫株式会社
後援:TOKYO FM














