スクウェア・エニックスは10月22日、「ファイナルファンタジー」シリーズ初のHD-2D作品『ファイナルファンタジー レゾナンス』を発売した。HD-2Dとは、ドット絵のキャラクターを3DCGの背景と光の演出の中に置く、同社独自のグラフィック様式だ。

原作は、2015年10月22日に配信が始まったスマートフォン向けRPG『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』(以下、FFBE)の1stシーズン。FFBEは海外版が2024年10月、国内版が2025年10月31日にサービスを終えている。原作の配信開始からちょうど11年後の同じ日に、運営を終えたゲームの物語が買い切りの家庭用RPGとして戻ってきたわけだ。

消えるはずだった資産を「商品」に戻す

運営型のスマホゲームは、サービスが終われば遊べなくなる。FFBEの終了後に残ったのは、ユニットなどを閲覧できる「メモリアル版」のみ。2026年5月に終了した姉妹作『FFBE幻影戦争』では、オフライン版を出さないことも告知されていた。

レゾナンスは、こうした資産を買い切りの商品として再び世に出した格好だ。開発陣はシナリオの大筋とキャラクター以外はすべて作り直したと語る一方、歴代主人公の必殺技演出にはFFBEのCG素材を活用し、サウンドトラックもFFBEの楽曲に新曲33曲を加えた全120曲で構成する。

ただし、サービス終了が開発のきっかけではない。週刊ファミ通のインタビューによれば、家庭用展開の話はFFBEの運営開始から2〜3年後には出ていた。中島啓輔プロデューサーは、FFBEを土台にすれば制作内容を見通せ、既存素材も使える利点があったと語っている。

HD-2Dは「回せる型」になった

2018年の『オクトパストラベラー』に始まるHD-2D作品は、直近2年だけでもHD-2D版『ドラゴンクエストIII』(2024年11月)、『ドラゴンクエストI&II』(2025年10月)、『オクトパストラベラー0』(2025年12月)と相次いで登場し、HD-2D版ドラクエI〜IIIは2026年5月に合計400万本を突破した。開発にはアートディンク、ドキドキグルーヴワークス、そして本作のランカースと、作品ごとに外部スタジオが加わる。協力会社を替えても一定の水準で作品を出せる「型」が確立したと言える。

なかでも『オクトパストラベラー0』は、スマホ向け『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を土台に家庭用で再構築した作品で、通常版の価格もレゾナンスと同じ7,678円だった。レゾナンスは、運営型タイトルをHD-2Dの買い切りRPGへ作り替える流れを、看板IPにまで広げたことになる。

大作と運営型の「間」を埋める

本事例の背景には、経営方針の転換がある。スクエニは2024年3月期に開発中止に伴う約221億円のコンテンツ廃棄損を計上し、中期経営計画で「量から質への転換」を掲げた。2026年3月期は営業利益率が18.4%と前期から5.9ポイント改善し、HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』を含む新作の販売も堅調だった。巨額を投じる大作ほど重くなく、運営型のように長期の運営コストも抱えない。HD-2Dの買い切りRPGは、その間を埋める商品になりつつある。

もっとも、古屋ディレクターがインタビューで「完全新作を1本作るぐらい大変」と振り返るように、資産を流用すれば安く済むという単純な話ではない。それでも、10年分の物語とキャラクターをサービス終了とともに眠らせない道筋が見えた意味は大きい。運営型ゲームの幕引きの先にも、買い切りという「第二の売り場」がある。レゾナンスはそれを形にしてみせた。