増井健仁がビジネス、エンタメ、政治など様々な分野のキーパーソンを迎え、“いま起きていること”と“これからの社会”を多角的に読み解き、新しい視点とヒントを届ける「MEDIAMIXI with interfm」。2026年10月6日放送回は、『GQ JAPAN』ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントの石田潤氏が登場。

ファッション誌『流行通信』でキャリアをスタートし、29歳で同誌の編集長に就任。大胆なリニューアルを行い注目を集めた。2004年に日経コンデナスト(現コンデナスト・ジャパン)へ入社し、『VOGUE NIPPON』(現『VOGUE JAPAN』)のエグゼクティブ・ファッション・フィーチャー・エディターとして、村上隆、杉本博司、草間彌生らをフィーチャーした企画を担当。その後『VOGUE HOMMES JAPAN』を経て、2010年に自身の会社を設立し独立した。

独立後は『Casa BRUTUS』『T JAPAN: The New York Times Style Magazine』などでコントリビューティング・エディターを務め、雑誌の枠を越えて展覧会の企画にも取り組む。2023年4月15日付で13年ぶりにコンデナスト・ジャパンへ復帰し、『GQ JAPAN』のヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントに就任。同年9月29日発売の2023年11月号で『GQ JAPAN』を11年ぶりにリニューアルし、「TOKYO NEW GENTLEMEN」というコンセプトを掲げた。

「編集とは料理みたいなもの」。そう語る石田氏が、2Dから3Dへと広がった編集の射程、センスを磨きたい若手に伝えていること、そしてAIが情報を束ねる時代に、メディアと個人が持つべき“ブランド力”までを語った放送のハイライトをお届けする。

編集とは「料理みたいなもの」

編集者として第一線で活躍する石田氏に、増井は「編集」という仕事について聞いた。

増井「出版社で働く編集長の方たち、みんなに質問をさせていただいているんですけど、そもそも編集するって、具体的に何か。概念がわかってなくて、編集って何ですか?」

石田「わかりやすく例えると(中略)パッと思ったのは、料理みたいなものだなと思っています。料理に例えるのが一番わかりやすいかなと思うんですけど、要するに料理って、その日の気分もあるけども、その時に流行っているものもあるし、ムードもあるじゃないですか。そこから“じゃあ、作るものを決めよう”って決めて、素材を集めて、調理方法を考えて、どういう盛り付けにしようかなっていうのを考えて……途中で変わることもあるし、それが自分も満足できて、それを食べてもらえる人もおいしいと思ってもらえればいいなっていうのが一番わかりやすい編集作業かなと」

増井「それでいうとシェフっぽいってことなんですかね?」

石田「そうでしょうね。レストランってチームじゃないですか。一人でやられるところもあるでしょうけど、大体は調理人の人がいて、サービスする人もいて、調理場にも複数の人がいるだろうし……それをオーケストラとも言うかもしれない。料理も、オーケストラって例えるけれども、そういうふうに複数で動くので、それとシェフの役割っていうのがわかりやすいかもしれないですね」

そんな石田氏は、一時期、フリーランスの編集者として活動していた時期もある。その際に行っていた“編集”についても語った。

石田「VOGUEでは、エグゼクティブ・ファッション・フィーチャー・エディターっていう肩書きだったんですけど、中間管理職みたいな立場で、現場に出ることも少なくなっていって。それこそチームをまとめたりみたいなこともあったんですけど、逆に自分の中がネタ切れになってしまったんです。それで、1回フリーに戻って、自分の中に栄養を溜めていかないとな……って。自分がこう出すものがなくなってしまったんですね」

増井「会社を離れて、独立されていた期間は、独立されたからこそ、仕事の幅みたいなものが広がったりするんですか?」

石田「そうですね。それこそ、もう今はやっていないんですが、ずっとやってみたかった『ギャラリー ここ』っていう、恵比寿のマルジェラのショップの上のスペースを、当時のマルジェラの人たちにご協力いただいて、展覧会を4回ぐらい企画させていただきました。雑誌って2Dじゃないですか? ちょっとそれを3Dにしたり、1から何かを企画するっていうことをやりたかったなっていうのがずっとあったので、そういったこともできたので」

増井「それでいうと、編集ということからキュレーションみたいな方向も含めての編集になっていった」

石田「そうですね。編集とキュレーションの言葉の違いって、私ちょっとよくわからないなっていうこともあるんですけど、どちらかというと2Dでやってたものを3Dにできたみたいな感覚でした」

増井「それでいうと独立されて、今までは雑誌の編集っていうのが、主だったものを、2Dから3Dにできる。それはファッションだけじゃなくて、いろんな領域ができるよねってなってきた時に、石田さんの感覚的には仕事が変わったという感覚だったのか、それとも今までやってる仕事の延長線上で、ただ単に立体化できるようになったかでいうと、どっちですか?」

石田「やっぱり立体化してみると、全然違う作業なわけですよ。それが、やってみて、逆に全然編集と通じるとこもあるんだけど、こんないろんな要素がかかってくるんだなっていうのがあって、すごいおもしろかったです」

“センスを磨きたいんです”と質問をされたら…

編集についての会話の中で、「自分の中に栄養を溜めていかないと」と考え、独立したことを明かした石田氏。では、その“栄養”はどのようにして蓄えられていくのか。増井はさらに話を聞いた。

増井「ご自身の見る目、審美眼みたいな、さっきも仰ってましたけど、ちょっともう一回枯渇しちゃったから独立されたって仰ってましたけど、これっていうのは、どうすれば手に入るものなんですか?」

石田「私に関して言うと、やっぱりひたすら、いろんなものを見て、触れて、自分で体験するっていうのが、私にとってやっぱり必要な要素だなと思っています。例えば、服ならば、若いスタッフの人にも言うんですけど、実際着てみないと服の良さってわからないじゃないですか。それと同時にアートでも展覧会で作品を見ないと、Instagram上だけではわからないし。実際に触れるってことですかね?」

増井「例えば、今、若いスタッフから“センスを磨きたいんです”とかって相談されたら、石田さん何をアドバイスします?」

石田「ひたすらやっぱり見て触れる。経験する。何でもいいからとりあえず見て触れて。そうすると自分の好みっていうのがわかっていくし、自分のスタイルが固まっていくし……」

増井「やっぱり何らかの形でトレンドを追いかけるとか、センスの部分で勝負するとかってなると、まず一番最初にやんなきゃいけないことは、引き出しを多くするためのインプット作業だよってことですかね」

石田「そうですね。それもただ単に情報として得るんじゃなくて、実体験としてやることなんじゃないのかなって思うんですけどね」

雑誌とAI――発信者はいなくなるのか?

さらに話題は、AI時代における雑誌やメディアの役割へ。AIが発達し、情報を瞬時にまとめて提示することが当たり前になったとき、情報を発信する人やメディアの存在はどうなっていくのか。

増井「今世の中AI、AIって言ってる状態において、雑誌におけるAIとの関わりって、今どんなことがありますか?」

石田「コンデナストとしてクリエイティブにAIを使うってことはやってないんですけども、OpenAIと提携して、OpenAIにコンデナストのコンテンツを提供というか開示しています。だから、OpenAIを通して検索すると、コンデナストの発信している情報も、そこからインフォメーションとして入ってくるっていうようなことはやっているんですね。あと、『ザ・ニューヨーカー』とかみたいなテキストが長いものは、日本にはないんですけど、USにはアプリがあるので、そこでAIで読み上げ機能みたいなものもあります」

増井「例えばOpenAIでいうと、ChatGPTとか、今までGoogleの検索で人が聞いていたのが、大体みんなChatGPTとかに聞くよみたいになってきちゃったじゃないですか? そうなった時に、今、コンデナスト社さんも、例えばOpenAIに提供していることによって、いわゆる情報が流し込まれていると。そうするとお客さんはChatGPTに知りたいことを聞いたら答えてくれちゃうじゃないですか。もちろんその時にエビデンスとしてのリンク先は、つけてくれるかもしれないんだけどみたいな時に(中略)今後、AIに先越されて情報発信する人たちがいらなくなるって時代、僕は来ないと思ってるんですけど、石田さんどう思ってます?」

石田「私は来ないと思いますね。結局情報だけ溢れても、どの情報を選び取るかは、その人次第じゃないですか。だからこそ、メディアは、より信頼性のあるものとか(中略)メディアの個性みたいなものも大事になってくると思います」

増井「我々読者、知りたい側からすると、確かにおっしゃる通りで、『GQ』に載ってたからイケてるっぽいなとか、ここで見たから嘘っぽいなとか、なんかそういうちょっと印象あるじゃないですか、どうしても。そういうのは大事かもね。ブランドっていうか、どこから発信されたかっていうのが」

石田「大事だと思うんですよね。やっぱりどこが発信してるかによって、それは人でも、この人はこう言ってるんだからおもしろいかもしれないとか、もっと調べてみようとか、やっぱり誰が発信するかっていうのはより大事になってくると思うんですよね」

増井「確かに。自分も学生の頃に裏原系のファッション誌があって、その作ってる人たちが出てくる雑誌と、転売のショップからカタログ的にわって出てる雑誌があったとしたら、その転売のカタログの方の雑誌は、確かにこれが人気だったんだって過去形では見たけど、一次情報としては捉えてないし、そっち側の雑誌で情報を得てる人たちは半歩遅いよってちょっと思ってたもんな」

石田「実際やっぱり誰から聞いたかってすごい重要じゃないですか。誰がこれ薦めてるかって。そこがより重要になってくると思うんですよね」

増井「そうですよね。だからそうなるとAIには解決できないもんね」

石田「AIには解決できないと思う。ただ逆にこのメディアが言ってんだからそうだよねって思えるだけのメディア力っていうか、それもやっぱブランド力なのかもしれない。それをやっぱり高めていくってことが逆に重要になってくると思います」

増井「それはビジネスパーソンも、別にメディアだけじゃなくて、大事かもしれないですね。この人が言ってるからそうかもなって思わせられるっていうのの繰り返し」

石田「いや、そうだと思いますよ。本当に」

増井「そういう意味では、編集の仕事だけじゃなくて、個々人、ビジネスをやっている人は、やっぱり自分の言葉に力をより得るためには、そういった先見性というか、それがそのセンスを磨くにも多分つながってくるのかもしれないけど、結局いろんなものに接触してないとできないですからね」

石田「そうだと思いますね。やっぱりいろんなものに触れてないと、それはわからないじゃないですか。あとは逆に周りにどれだけそういった信頼できる目というか、声をおけるかみたいなことなんじゃないかなと思います」