フランスで5月5日、生成AIシステムによって消費されるクリエイティブな知的財産(IP)を保護し、収益化することを目指す野心的なスタートアップ「IPFC(Intellectual Property for Creators)」が立ち上がった。創設者は、エマニュエル・リプシッツ氏(ミュージシャン)とトーマス・コーエン氏(ファッション起業家)。

米エンターテインメント業界誌バラエティー(Variety)によると、IPFCは、著作権使用料を徴収し、それをクリエイターに分配するフランスの著作権管理団体SACEM(サセム)と同様のビジネスモデルを採用。ただ、個々の作品がAIモデルに取り込まれ再構成されると、追跡がさらに困難になることから、作品そのものではなく、アイデンティティを管理するアプローチをとる。

クリエイター、ブランド、著名人は、氏名、肖像、声、ビジュアルアイデンティティなどの主要な属性を登録し、使用方法を定義。その後、IPFCはAI生成コンテンツやソーシャルメディア上のコンテンツを監視し、権利侵害の疑いがあるものを特定し、コンテンツの削除や訴訟前の措置を講じる。

当初のターゲットは、映画、音楽、出版、スポーツ、インフルエンサーなどの分野で、2027年までにラグジュアリーやファッション分野への進出も計画している。

IPFCによると、毎日3,000万件以上のコンテンツが生成されており、デジタルコンテンツの最大90%は、少なくとも一部がAIで生成されるようになる可能性があるという。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「IPFCのビジネスモデルがSACEM(フランスの著作権管理団体)と同様の集中管理アプローチを採用した点は、AI時代の権利管理が「個別交渉」から「集中管理」へ回帰しつつあることを物語る。

20世紀の音楽産業はSACEM、JASRAC、ASCAPなど集中管理団体を作って著作権使用料の徴収・分配を効率化した。AI時代になり、毎日3,000万件以上のコンテンツが生成され、デジタルコンテンツの最大90%が一部AI生成になる可能性があるなか、個別クリエイターが自分の権利を守りきることは事実上不可能だ。

IPFCは映画・音楽・出版・スポーツ・インフルエンサーをターゲットに、登録→監視→侵害検出→削除/訴訟前措置という一気通貫のサービスを提供する。

創設者はミュージシャンのエマニュエル・リプシッツ氏とファッション起業家のトーマス・コーエン氏で、2027年にはラグジュアリー・ファッション領域への展開も計画。AI時代版SACEMが、フランスから立ち上がった格好だ。」