2026年5月14日、米カリフォルニア州の歳出委員会は、サービス終了後のデジタルゲームのプレイ環境維持、または返金を義務付ける法案「AB 1921」を可決し本会議へ送付した。ゲームを「所有物」とみなす消費者と、「ライセンス供与」とする業界団体の対立は、デジタルビジネスにおける所有権のあり方に一石を投じている。

本法案は市民運動「Stop Killing Games(SKG)」が起草に関わった。事業者に対し、サポート終了後も独立してプレイできる環境の維持を要求し、不可能な場合は返金を義務付ける。2027年以降の発売作品が対象で、60日前までの通知義務も含むが、サブスクや無料ゲームなどは対象外だ。EUでも同様の法制化検討が進んでいる。

一方、米業界団体(ESA)は真っ向から反対を表明した。現代のゲームは「ライセンス供与」であり、サーバー等の無期限維持は不可能だと指摘。成立すれば開発コストの上昇やイノベーションの損失を招くと主張している。

巨大市場である同州での審議は、デジタル資産の寿命とユーザーの権利を巡る構造的課題として、今後の動向が注視されている。

「所有」から「利用」へ向かうデジタル社会。ライセンス型ビジネスが直面する構造的課題

本議論は単なるゲームの枠を超え、市場全体が直面する「デジタル資産の寿命とユーザーの権利」という構造的課題への回答である。

従来のパッケージ売り切り型から、オンライン前提の「ライブサービス型」へのシフトに伴い、消費者の対価は「所有権」から「利用権」へ静かに移行する。パブリッシャーの都合によるサービス終了が顧客資産の消滅を意味する構造が、今回の激しい市民運動を誘発したと言える。

一方で、現代のゲーム表現はレイトレーシングやAI、高度なミドルウェアなどサーバーインフラと密接に結合している。これらを切り離してスタンドアロンで動作させるパッチの再構築は、技術的・コスト的に多大な負荷を伴う。

この法案が成立すれば、企業は対象外となるF2Pやサブスクへの傾斜を強めるか、あるいはWeb3やP2Pを活用した分散型サーバーなど、中央集権に依存しない新たな仕組みを模索せざるを得ない。

こうした摩擦は、動画配信のコンテンツ消去、SaaS終了によるデータ移行リスク、IoT家電の文鎮化など、あらゆるサブスク・ライセンス型経済に共通する。

一般ビジネスへの示唆は、「企業が顧客を自社のサービスに囲い込むやり方」から、「購入したものをデジタルでも顧客自身が自由に扱える権利を大切にする、新しい消費者第一主義」への変化である。製品設計時からサービス終了後の救済やオープンソース化といった「エンドオブライフのデザイン」を組み込むことが、今後のグローバル標準となるだろう。