米司法省(DoJ)は9月1日、ニューヨーク・タイムズ紙がオープンAIとマイクロソフトを相手に提起した著作権訴訟における意見書の中で、オープンAIの「フェアユース(公正な利用)」の主張を支持すると明らかにした。AI企業が著作権で保護されたテキストを用いて大規模言語モデル(LLM)を訓練することはフェアユースに該当するという立場を改めて強調した。

レコード会社などを原告とするものを含め、米国でAI企業に対して提起された数十件の著作権訴訟は、AIの学習がフェアユースに当たるかどうかを問題の核心としている。ドナルド・トランプ米政権はかねて、この重要な法的疑問について裁判所が判断すべきだと述べてきたが、今回の著作権訴訟への司法省の介入は、トランプ政権が裁判所にどのような判断を下すべきだと考えているかを明らかにしている。

司法省は今回、AI技術における米国の世界的なリーダーシップの維持と発展を促進するという政権の方針を指摘し、LLMの学習を目的とした著作物の複製は著作権法に違反しないとの判断を下すよう、ニューヨークの連邦裁判官に求めた。

なお、LLMが市場を希薄化させ、人間が執筆した著作物に取って代わる可能性については、司法省は出力結果そのものではなく、実際のトレーニングに焦点を当てていることを強調。「出力段階(学習段階ではなく)においては、LLMが著作権で保護された原作を再構成して頒布する場合、特定の利用は変容的とはみなされない可能性がある」としている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「意見書の動機は、文面に明記されている。「AI技術における米国の世界的リーダーシップの維持と発展」——つまりこれは著作権論である以上に、国家戦略の表明である。AI覇権を競う地政学の中で、学習データの調達を法的に安定させたい。その国益判断が、クリエイター保護との天秤にかけられ、NYタイムズ側は「無数の作り手を犠牲に巨大AI企業の側に立った」と強く反発している。音楽、映像、ゲーム、出版の数十件の係争への影響は両面ある。不利な面は、無断学習を争う訴訟での権利者側の交渉力低下だ。ただし意見書が擁護したのは「テキストの学習」で、たとえば歌詞の学習が争点の対アンソロピック訴訟には響きうる一方、音源を扱う対Suno訴訟への射程は限定的だろう。しかもSuno裁判の主戦場は、学習の是非から「入手経路」——ストリームリッピングの疑い——へ移っており、そこはフェアユースでは救えない。意見書は「出力」での原作の再構成にも留保を付けた。拘束力はなく、判断は裁判所に委ねられている。学習、入手、出力——三つの戦線の行方を注視したい。」