グーグルは6月25日、「米国におけるAIガバナンスへの実践的アプローチ」と題した文書を公開。AIの学習はフェアユース(公正利用)に該当し、著作権の取り締まりは入力データではなく出力データに対して行われるべきだと論じている。

音楽業界とAI企業との著作権訴訟では「著作権で保護された作品を無断でモデルの学習に利用することがフェアユースにあたるか」が争点となっている。

グーグルは、一般に公開されているウェブデータを用いてAIモデルを学習させる行為は、米国においてフェアユースにより「引き続き保護されるべき」だと主張。

生成AIが引き起こす著作権上の懸念については、入力段階ではなく出力段階で対処するのが最善であり、モデルがどのように訓練されたかでなく、特定のコンテンツが既存の作品を複製しているかが問題だと指摘した。

責任ある開発者は、自社の「Google-Extended」などの機械可読タグを通じて、コンテンツがモデルの開発に使用されるかどうかについて、ウェブサイト所有者に決定権を与えるべきだと主張。同時に、自社は権利者との間で新たな形態の提携や価値交換モデルを模索していると述べた。

同社は併せて、最先端のAIモデルに対する安全基準の設定や監査の検証を行うことを目的とする、連邦機関の監督下にあり、業界が資金提供する独立組織「フロンティアAI規制機関(FARO)」の設立を提唱している。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「グーグルが公開したAI政策文書は、AIの学習を著作権のフェアユースと位置づけ、その考え方を巧みに示している。
同社の論理では、公開されたウェブ上のデータでAIを学習させることは、いわば美術学生が画廊を歩いて着想を得るようなものだ、という発想に近い。人間が既存の作品から学ぶのと同じく、AIの学習も許されるべきだという主張である。
ただ、この比喩には注意も要る。人間一人の学習と、映像や文学、そして音楽など無数の作品を一括で取り込むAIの学習を、同列に扱ってよいのかという議論があるからだ。
グーグルは同時に、権利者が自社サイトのデータをAI学習に使わせるか選べる仕組みや、権利者との新たな提携モデルの模索にも言及している。全面的な無断利用を主張しているわけではなく、一定の配慮も示す構えだ。
世界最大級のテック企業がどんな論理でAI学習を正当化するのか——その理屈の組み立て方自体が、今後の議論の土台になりそうだ。」