増井健仁がビジネス、エンタメ、政治など様々な分野のキーパーソンを迎え、“いま起きていること”と“これからの社会”を多角的に読み解き、新しい視点とヒントを届ける「MEDIAMIXI with interfm」。2026年5月26日放送回は、株式会社ドワンゴ取締役の横澤大輔氏が登場。
1981年、東京都生まれ。大学在学中にドワンゴの着信メロディ事業に参画し、2001年からコンテンツ戦略担当として携帯コンテンツ制作に携わる。ニコニコ動画の公式生放送や各種イベント、新規事業の立ち上げを手がけ、2012年に始まった「ニコニコ超会議」では統括プロデューサーを務める。2016年からは初音ミクと中村獅童が主演する新作歌舞伎「超歌舞伎」の総合プロデューサーも担当、一般社団法人日本ネットクリエイター協会代表理事も務める。
2026年4月25日・26日に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2026」には、前年を上回る13万8228人が来場。「超ニコニコ盆踊り」をはじめ70を超える企画が並び、クリエイターの出展枠「クリエイタークロス」には過去最多となる900組超が集まった。
「好きなことを思いっきり好きと言える居場所を作っていく」。ニコニコの根幹をそう語る横澤氏が、生成AIの時代にも残ると考える“人の思い”、議論そのものを公開する独特のマネジメント手法、そして日本のIPを海外へ届けるための視点までを語った放送のハイライトをお届けする。
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AI時代、ニコニコはどうなっていく?
「ニコニコ大会議」の流れをくむ一大イベントとして、2012年から毎年4月下旬ごろに開催されている「ニコニコ超会議」。2026年4月25日・26日に幕張メッセで開かれた「ニコニコ超会議2026」には、13万8228人が来場した。その熱量に感銘を受けた増井は、まず横澤に“ニコニコらしさ”について質問を投げかけた。
増井「最初は、インターネット上の新しい集まる場所だったんだけど、今やもう文化になってるじゃないですか。今の横澤さんから見る、ニコニコらしさって、どういうところにありますか?」
横澤「根本的には変わってないんですけど、表現に寄り添うプラットフォームであっていこうと思っています。好きなことを思いっきり好きと言える居場所を作っていくっていうところが、僕らニコニコの根幹です」
増井「コンテンツがいっぱい集まったことにより、ヒットが出るようになり、その中からスターもいっぱい出たじゃないですか。発掘のために作ったわけではないものの、発掘されていって、ニコニコという世界の中の人たちの共感だけじゃなく、社会との接点に切り替わり、社会の中で評価されて行ったと思うんですよね。ただ、直近、AIが出てきて(中略)人間が手を動かさなくても、何かが書き出される時代になっちゃった。(中略)AIっていうものに対して、今横澤さんってどう思われてます?」
横澤「技術の進化とともに僕らも表現と向き合ってきたっていうことがある中で、まず1つはボーカロイドっていうのも、そういうことだったと思うんですよね。これが今までの音楽とボーカロイドで作った音楽って、どう違うのかっていうふうな議論をした時に、それは技術的には違うし、作り方は違うけれども、作曲者の思いであったり、何だかの欠乏感があって、そこに対して、どういう表現でみんなに共感してもらうのか、逆に背中を押してあげるのかみたいなところは、やっぱり残ってると思うんです。つまりAIが来たとしても、僕はそのAIを使った人がどういう思いでその楽曲を作っていくのか、表現をしていくのかっていうところは残る。(中略)現時点では、AIのどういう思いで、そのプロンプトを書いていくのか、生成のアウトプットの指示を出していくのかっていうところを考えた時に、やっぱり人の思い、どういうメッセージを世の中に出していきたいのかっていう、質量っていうものは変わらないと思うので、そこを大切にしていってあげたいなっていう感じです。結局AIって完全なものを作っていく方向性だと思うんです。より良いものを効率化するし、合理化していくっていう方向で動いていくわけじゃないですか。そうすると、作り手は多分、合理化、効率化っていう方向で表現をしないと思うんですよね」
増井「そうですね」
横澤「そうなると、やっぱり不完全なものであったりとか、曖昧なものであったりとか、なんかそういった方向のものっていうのを、作っていくことになるわけじゃないですか。その不完全さっていうものを完全にしていこうっていうのが、お客さんとのコールアンドレスポンスだと思っていて。これっていうのがやっぱりニコ動のおもしろいところだったと思うんです。だから、例えばYouTubeの天才をニコ動に持っていくとどうなるかっていうと、評価しか生まなくなるんですよ。つまりそれが完全なものに見えるので、これがおもしろいかおもしろくないかっていう、その評価の方向にコメントが行くんです」
増井「なるほど」
横澤「ただ、作り手が余白を作ってあげる。ここにこういうツッコミをしてほしいなとか、あえてボケるだけボケて、動画にツッコミを入れないっていうことが余白になるわけじゃないですか。そうすることによって、コメントがツッコんで、お客さんのコメントと自分たちの作品が一つの表現になっていくっていうような遊び方っていうのが、僕はニコニコらしさかなというふうに思っていて。なので、脳内にある情報を補完した時に完全になるという方向で、僕らは進化をさせてきたし、これからも進化させたいと思っています。その中でAIがどういうような役割だったりとか、活躍をしてくれるのかっていうのは、今もう目下考えているっていう感じですね」
コロナ禍を経て生まれた独特なマネジメント会議
番組の中盤では、ニコニコ動画の世界観を構築していくにあたってのスタッフィングにも話題が及んだ。
増井「わかっている人たちをアサインしていくっていうのは、超大事だと思うんですけど、ある種専門的な世界の中で、どうやってスタッフィングをしているんですか?」

横澤「その人がどの界隈に興味があるかというのは面接の時点から、明確にプロファイリングをしています。僕が全部見ているので、その子がまずは次にどういうスキルセットを持っているのか、要は好きっていう情熱はベースにあるとして、その好きっていう情熱をどういうスキルセットで表現したいのかと。例えば、それがプロジェクトの進行管理的な方向に彼らがそのモチベーションがあるのか、あるいはクリエイティブをしていくのか、でもクリエイティブをしていくにあたっても、それはお金儲け的な方向でクリエイティブをしていくのか、あるいは表現者をちゃんとサポートしていくっていうようなクリエイティブなのかとか……。そういう風にスキルセットと情熱っていうのを、まず僕は相当見るんです。それで、もちろんそういった好きなことを思いっきり好きと言える居場所を作っていくんだよっていう、コーポレートメッセージ的なものを出していきながら、母数を集めていきながら、面接を繰り返していくと。で、そこから配属をしていった時に、そこからはもう1on1の体制です。1on1で、スタックしたところをこのチームでどういうふうにサポートをしていくかっていうことをやりながら、情熱を絶やさないっていうのを結構細かくマネジメントしています」
増井「横澤さんは、今も各スタッフの皆さんと密に連携取っているんですか?」
横澤「取っていますね。コロナ禍以降、リモートになっちゃったっていうところがあって、議論をする時とかにしんどかったりする。クロストークができなかったり、相手の表情が見えなかったり……そこからもう1回、半分はフィジカルに戻したいなっていう思いがあって、半分ぐらいは、フィジカルに戻したんです。週2回ぐらい。で、月1回、僕の本部のメンバー、200名ぐらいを全員集合させるというのをやっています」
増井「いいですね」
横澤「ロの字型でマネジメントチームが座るんです。僕を含め、本部長、部長、セクションマネージャーっていう感じで。そのロの字型の議論を、他のメンバーがオブザーブで見るんです。これは、どういう意図かっていうと、僕らの議論を公開で見させるんです。そうすると“あ、こういう判断軸があって、僕らにこれが意思決定が降りてきてるんだな”っていうふうにわかってもらえるんですよね」
増井「なるほど」
横澤「そうすると、界隈がバラバラで、多様的だったとしても“この界隈は、こういう判断をするんだな”と判断軸をみんなにシェアできる。その全体会をやってるんです。これがめちゃくちゃうまくいってて、強化軸だったりとか、判断軸を渡すことによって、彼らに無駄なリソースを使わせないようになりました。こっちだよっていう頂上を示してあげて、登り方はみんな好きにどうぞっていうマネジメントを今しているんですけど」
増井「過程を見てると“あ、こういう意図でこのゴールなんだね”ってなった時に、こういう意図があるから、全く明後日の方向の道には行かないじゃないですか。それはすごく貴重な体験をみんなしてるかもしれないですね」
横澤「そうですね。だから専門性が高いと、結構回り道しちゃうじゃないですか。例えば“今ネットでこういう炎上っぽいのがあるから、こういう保守的な考えで行かなきゃ”とかが界隈ごとに起きていくと崩壊するんです、組織的には。なので、ここまでは行くけど、ここからは行かないよとか、そういうのをそこの場で議論するんですよね。全体感を。そうすると彼らも安心してくれるし。選択と集中ができるっていうことが起こっています」
増井「それ月1回ですか?」
横澤「月1回ですね。普通は向き合うじゃないですか、対面でやるじゃないですか」
増井「そうですね」
横澤「で、みんなに発表するっていうことなんですけど、僕らはそれをやめて議論を見せるっていう方向にした時に成功したんです」
増井「そっちの方が聞いてる方たちも、あわよくば“俺もあの議論の中に入りたい”っていうね。これはおもしろい仕組み作られてますね」
横澤「(中略)それをZoomでもやるんですよ。それは何のためかっていうと、みんなコメント打てるじゃないですか。だからチャチャ入れていいよって言ってるんですよ、僕」
増井「ニコ動っぽいなあ。(中略)会議の発言者じゃなくても、そこに何か思ったことはバンバン」
横澤「バンバン書いていいよっていう、精神的な安全性を渡しているんです」
増井「好きに発言していいよってなっても、議論してる途中で“すいません”って止めるのって(中略)プレッシャーかかりますもんね。それパタパタって打てばいいんだ」
横澤「もう5文字でも“いいね”とかでもいい。そこで参加感を出してもらって。これはニコ動で培われたノウハウかもしれないです」
日本のコンテンツの強み
番組の終盤は、日本のIPの強みについての横澤の見解に迫った。

増井「最近、日本はIPを、輸出できるっていうような流れが急激に強くなってると思います。横澤さんは、海外に向けた日本のエンタメコンテンツの強みって何だと思います?」
横澤「クールジャパンとかっていうところにつながるんじゃないかなというふうに思っています。結構ローカライズしすぎな可能性はあるなというふうに思ってて。結局、海外で見てる人って、日本語で聞いて字幕で理解していくみたいな。ゆくゆくは日本語もしゃべれちゃうみたいな人たちがマーケットじゃないですか。まずはありのままの日本のコンテンツを持っていくっていうこと。あとは、結局単発単発で売っているので、“この文化っていうものを持っていってないな”っていうふうに思うんです。でも、楽しみ方であったり、日本で楽しまれている文化を、丸ごと持っていく中にIPがあるって思っていて、輸出をしていく必要性があるんじゃないかなっていうのを改めて今、感じてますよね」
増井「それでいうと、横澤さんがこの海外に何か今チャレンジしてみたいことって何かあるんですか?」
横澤「これは言えるのかな。(中略)夢としては全然語れるのですが、やっぱり超歌舞伎を持っていきたいんです、僕は」
増井「あれ、素晴らしいですね」
横澤「初音ミクさんと中村獅童さんが主演で、歌舞伎というものの中に、一つのIPが入っていくっていうようなフォーマットを海外に持っていって、文化として根付かせていきたいなっていう思いはあります」
増井「今までやられてきた中での、まずご自身の実感として、一番あそこに強烈に反応する属性の人たちってどういう人たちですか?」
横澤「意外と歌舞伎ファンだったっていう」
増井「すごい。なるほど」
横澤「僕は、もっとミクちゃんファンが、それを支えてくれるっていう方向で、考えてたんです。だから演目も、やっぱりこの初音ミクさんの世界の中を描いていくっていうことであったり、ミクちゃんの世界が歌舞伎とミーツすることによって“自分たちのコンテンツって、こんなに伝統的なものと繋がった”っていう自信を持ってもらえるんじゃないかと僕は思っていたんですけど。歌舞伎界でいうと、今の歌舞伎をアップデートするんではなくて、江戸歌舞伎っていう江戸時代に流行っていたフェスみたいなのがあって(中略)“昔はきっとこうだったに違いない”とかっていう風に見てくださって支持をしてくださる方がすごい多いんですよね。歌舞伎って、本来ペンライト的なものを振るし、そこでごはんを食べたり、お酒を飲んだり、途中でしゃべったりっていうような、フジロックみたいな。1日、その世界の中に、どっぷり浸かるみたいなことが、楽しみだったらしいんですよ。だからそういうやっぱり人たちに、ウケたっていうのは、おもしろい現象だったなと」
増井「なるほどね。(中略)海外挑戦、すごいチャレンジしがいありそうですね。歌舞伎の根底がずれてないから。今の歌舞伎だったら、今の歌舞伎はこうだよっていう捉え方ができるわけじゃないですか。歌舞伎を変えたんだよじゃないですからね」
横澤「そうなんです。日本の一番かっこいい、ファッション的な要素も含めて輸出するっていうフォーマットとして歌舞伎を使っていくっていうのは、チャレンジしたいなって思っています」














