ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)とガンホー・オンライン・エンターテイメントが8月28日、資本業務提携契約を締結したと発表した。SMEは、ガンホーの現筆頭株主であるSON Financial合同会社から普通株式1200万6500株のすべてを、1株2385円、総額約286億円で取得する。発行済株式総数(自己株式を除く)の約22.9%にあたり、SMEが新たな筆頭株主となる。
取引は市場外の相対取引で、実行予定日は2026年12月30日。公正取引委員会への届出などが条件となる。完了後のSMEの議決権所有割合は23.29%となり、間接的に株式を持つソニーグループもガンホーの「その他の関係会社」に該当する見込みだ。
買われる側のガンホーは何に困っているのか
ガンホーの前身は、1998年にソフトバンクと米OnSaleの合弁で設立されたオンセール株式会社だ。初代社長は、ソフトバンク創業者・孫正義氏の弟である孫泰蔵氏。オークション事業が振るわず、2002年に社名をガンホーへ変更。韓国発のMMORPG『ラグナロクオンライン』の国内運営で再出発した。転機は2012年配信の『パズル&ドラゴンズ』で、日本のスマホゲーム市場の拡大を象徴する企業となった。
だが足元の数字は厳しい。2025年12月期の連結売上高は932億円(前の期比10.0%減)、営業利益は50億円(同71.1%減)、最終利益は14億円(同87.4%減)と落ち込んだ。『パズドラ』単体の売上高も255億円と約4割減り、全社売上に占める比率は27%に下がった。2026年12月期の業績見通しは「合理的な数値の算出が困難」として非開示のままだ。
売り手は孫泰蔵氏の資産管理会社
売り手のSON Financial合同会社は、孫泰蔵氏の資産管理会社である。ソフトバンクは2013年にガンホーを子会社化したが、2015年に親会社ではなくなり、2016年の公開買付けで関連会社の関係も解消していた。今回、孫泰蔵氏側の持ち分も抜けることで、ガンホーは創業者の資本から完全に離れる。
2025年、ガンホーはアクティビスト(物言う株主)のストラテジックキャピタルから、当時社長だった森下一喜氏の退任を含む株主提案を受けた。提案は臨時株主総会で否決されたが、2026年2月に森下氏は代表権のない取締役会長兼最高開発責任者へ退き、CFOだった坂井一也氏が社長に就任。今回の提携は、その経営刷新の延長線上にある。
KADOKAWA、バンナムに続くソニーの少数出資
一方、ソニー側にとってこの形は目新しくない。ソニーグループは2024年12月にKADOKAWAと資本業務提携を結び、2025年7月にはバンダイナムコHD株式の約2.5%を約680億円で取得した。いずれも完全買収ではなく、少数株主として協業関係を築く手法だ。今回もSMEは、ガンホーが上場会社である限り経営の独立性を尊重するとしている。
SMEは音楽会社の顔だけではない。傘下のアニプレックスはアニメ製作の国内最大手のひとつで、『Fate/Grand Order』を運営するラセングルも抱える。両社は今後、ガンホーが手がけるスマホ・コンソール・PCゲームの共同開発と共同運営、ソニーミュージックグループのIPを活用した新規ゲーム企画、『パズドラ』などでのコラボ企画を検討していく。
この提携が意味するもの
ガンホーは自己資本比率7割超の財務基盤を持つ一方、『パズドラ』に続く柱を作れずにいる。IPと販路を持つ相手と組むことは、その柱を育てる時間を買う手段になり得る。ソニーにとっては、長期運営型タイトルの知見を持つ開発会社を、完全買収のコストとリスクを負わずに取り込む一手だ。提携開始は12月30日を予定し、ガンホーは当面の業績への影響を軽微と見込む。成果が形になるのはその先の話になるだろう。














