ソニーグループの十時裕樹CEOは昨年の就任以来、テレビ事業や金融事業の分離などを実施。世界有数のエレクトロニクス企業から、音楽、映画、ビデオゲーム、それらを支える技術に焦点を当てたエンターテインメント企業への変革を進めている。

大学卒業後すぐに入社した十時氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューの中で「従来の事業は重要で大いに尊重しているが、私たちは変化しなければならない」とコメント。入社当時は社内で誰もエンタメ業界について口にすることもなく、ソニーが現在のようにエンタメ中心の企業となることは想像できなかったと話す。現在、ソニーの年間売上高の3分の2以上は、映画、音楽、ビデオゲームによるもので、アニメ事業の拡大にも大きく期待を寄せている。

重要な戦略の一つは、ヒットしたビデオゲームを映画・テレビ番組化し、価値あるエンタメ資産から継続的に収益を生み出し続けることで「それが私たちが作り出したい『フライホイール(継続的にビジネスを成長させる好循環)』だ」と強調。ゲームとアニメを融合する方法を模索していると付け加えた。

エンタメ部門の脅威となり得るAIについては、人間の創造性を代替するものでなく、高めることができるものだとの見方を示した。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「十時CEOの言葉で最も戦略的なのは「フライホイール」だ。ヒットしたゲームを映画やドラマにし、価値あるIPから継続的に収益を生む好循環を作る——ゲームとアニメの融合も模索するという。この構想には、長い助走がある。始点は、ジョブズも尊敬した創業者の一人、盛田昭夫氏だ。プラザ合意後の円高で「モノづくりだけでは会社が成り立たなくなる」と見抜き、多角化へ舵を切った。80年代末にCBSレコードとコロンビア映画を買収して音楽・映画へ、90年代にプレイステーションでゲームへ、そして21世紀にはアニプレックスやCrunchyrollを擁しアニメへ本格進出。批判もされた買収の種が、40年かけて「素材も調理も世界への給仕も一つ屋根の下」という布陣に育った。ディズニーがIP垂直統合の西の横綱なら、こちらはゲームとアニメを軸にした東の型。今や日本のコンテンツ産業のモデルケースになっている。」