任天堂のIP戦略が、新たな段階へ進もうとしている。
世界的な玩具・ゲーム企業Hasbroは7月16日、『ゼルダの伝説』を題材とした商品展開について任天堂とのライセンス契約を締結したと発表した。2027年より複数年にわたって商品を展開し、第1弾として6インチサイズのフィギュア3種を投入する予定だ。詳細は2026年7月開催のサンディエゴ・コミコンで公開されるという。
一見すると新作フィギュアの発表に過ぎないニュースにも映る。しかし今回の提携は、『ゼルダの伝説』というゲームシリーズが、世界規模で展開されるエンターテインメントIPへと歩みを進めていることを示す出来事として注目に値する。
ハズブロとの提携が意味するもの
Hasbroは『トランスフォーマー』や『マジック:ザ・ギャザリング』といった自社IPに加え、『スター・ウォーズ』や『マーベル』など数多くのライセンスIPの商品展開も担ってきた。「Marvel Legends」や「Star Wars: The Black Series」は、映画やゲームと歩調を合わせながら長期的にシリーズ展開される代表例であり、Hasbroは単発の商品販売ではなく、IPを継続的に育てるビジネスモデルを築いてきた企業でもある。
そのような企業が『ゼルダの伝説』を複数年契約のライセンスIPとして迎え入れたことは、任天堂が同シリーズを長期的なグローバルブランドとして育成していく姿勢を示すものといえる。
一方の任天堂も、IPごとの品質管理を重視しながら外部企業とのライセンス事業を展開してきた。近年はその動きがさらに加速し、ゲームソフトの枠を超えたIP活用へ軸足を広げつつある。
任天堂とHasbro、両社の戦略が交わる
こうした流れを象徴するのが、近年相次ぐ異業種との提携である。
ユニバーサル・スタジオの「スーパー・ニンテンドー・ワールド」、レゴとの商品展開、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界的ヒットなど、任天堂はゲーム以外の接点を急速に増やしてきた。さらに2027年には『ゼルダの伝説』実写映画の公開も予定されており、IP活用は今後も広がっていく見通しだ。
一方のHasbroも近年は「Franchise First」を掲げ、自社IPとパートナーIPの双方を長期的に育成する戦略を推進している。今回の提携は、両社のIP戦略が一致した結果と見ることもできる。
もっとも、現時点では実写映画との商品連動などは発表されていない。ただし、商品展開の開始時期が映画公開予定と近接していることから、市場ではIP展開全体との相乗効果を期待する見方もある。
『ゼルダの伝説』だからこそ意味がある
今回の発表が持つもう一つの重要なポイントは、対象が『ゼルダの伝説』であることだ。
『スーパーマリオ』が長年にわたり幅広いキャラクター商品を展開してきた一方、『ゼルダの伝説』ではamiiboやスタチュー、可動フィギュアなどは存在したものの、世界規模で継続的に展開される玩具シリーズは決して多くなかった。今回の提携は、その状況が変わりつつあることを示す動きといえる。
近年のゲーム業界では、ゲーム会社はソフト販売だけでなく、IPそのものを長期運営する企業へ変化しつつある。レゴと任天堂の協業や、マテルによる『ポケットモンスター』関連商品なども、その流れを象徴する事例だ。
Hasbroとの提携は、新たなフィギュアシリーズの始まりであると同時に、『ゼルダの伝説』がゲームシリーズの枠を超え、世界的キャラクターIPとして育成されていく過程を示す出来事でもある。ゲーム企業が競う対象は、もはやソフト販売本数だけではない。映画やテーマパーク、玩具、アパレルなどを通じてIPとの接点をいかに広げられるか。その競争の中で、『ゼルダの伝説』もまた新たなステージへ踏み出したといえそうだ。














