映画ファンから熱狂的な支持を集める映画レビューのソーシャルネットワーク「Letterboxd」は、身売りに向けて、Netflixやソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)、パラマウント・スカイダンスなどと初期段階の交渉を行っているようだ。米デジタルメディア「Puck」などが伝えた。

ほかにも、NBCユニバーサル(NBCU)から分離したケーブル会社「Versant」、Reddit共同創業者のアレクシス・オハニアン氏、プライベート・エクイティ企業のRedBirdとTPGが買収を検討しているとされる。

ニューランドで2011年に設立されたLetterboxdは新型コロナウイルスのパンデミック中に人気が急上昇。2026年6月現在の会員数は世界で3,000万人以上で、昨年だけで1,000万人伸ばしたとされる。同社株式のうち60%をカナダ持株会社Tinyが、残りをLetterboxd共同創業者の2人が保有している。TinyはLetterboxdの企業価値を2億5,000万ドルと評価している。

Netflixやソニー、パラマウントといった企業がLetterboxdを傘下に収めるという見通しは、利益相反を招くことも懸念される。一方、米映画業界メディア「IndieWire」は、ソニーによる買収は「ある程度理にかなっている」と指摘。館内で本格的な食事が楽しめる米映画館チェーン「アラモ・ドラフトハウス」買収や、映画向け没入型体験施設を運営する米新興企業コズム(Cosm)への投資などと同様に、ニッチで熱心な視聴者層に目を向けた動きだからだ。半面、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収合戦から撤退したNetflixが真に必要としているのはさらなるIPであり、またパラマウントはWBDとの統合後に約800億ドルの負債を抱えることから、合理的ではないとみている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「約394億円(2.5億ドル)。映画レビューSNS「Letterboxd」にそんな値が付き、Netflixやソニーが買収を競っている。日本人ならこう思うはずだ。「観た映画を記録して感想を共有するなら、Filmarksが前からあるのでは」と。

 
その通り、機能はよく似ている。違いは、サービスの重心にある。国内サービスの多くが「観た映画の記録と、観る映画選びの参考」という実用の道具であるのに対し、Letterboxdは映画趣味で自分を表現するSNSへ進化した。
 
プロフィールの「お気に入り4作品」が自己紹介となり、気の利いた一言レビューが拡散し、俳優が自身のお気に入りを語る動画が名物化する。映画を語ることが、Z世代のアイデンティティ表現になったのだ。
 
道具は代替できるが、文化は代替できない——394億円は、その文化への値付けである。国内サービスが学ぶべき点も、ここにあることが読み取れる。」