現地時間7月10日、パリ郊外ヴィルパントで開催中の欧州最大級の日本カルチャーの祭典「Japan Expo Paris 2026」。その25周年記念ステージでライブパフォーマンスを披露したYOSHIKIが終演後、各国のメディアを集めた共同記者会見に臨んだ。MEDIAMIXIも参加した約30分の会見を、ほぼ全文でお届けする。
(取材・文:MEDIAMIXI編集長 榎本幹朗 7/10 Japan Expo 2026 Paris会場にて)
「毎回、これが最後だと思っていた。でも、不可能はない」
――2024年10月に3度目の頸椎手術を受け、長いリハビリを経て、今年4月の東京ガーデンシアター公演で完全復帰を果たしました。幾度も困難を経験しながら、多岐にわたる創作のエネルギーをどう持続させていますか。
YOSHIKI: そうですね…。首の問題とは、結構長い付き合いなんです。手術は3回受けているんですが、毎回「これが最後だな」と思っていました。ただ、僕の音楽を必要としてくれる人たちがいる。だったら、不可能はない。それを実践していくべきだと思ったんです。特に3度目の手術が一番つらかったですね。約1年間リハビリをして、なんとかまたドラムを叩けるようになりました。ピアノはもちろん、その前から弾き始めることができたんですけど。周りの友人や、支えてくれる人たちがいたから、前に進んでこられた。自分ひとりの力じゃないんです。だから今、ここにいられるんだと思います。
「僕、結構常連ですね(笑)」 Japan Expoと共に成長した19年
――MEDIAMIXIの榎本です。私が調べたところ、今回でJapan Expoへのご出演は8回目になります。初出演の2007年は来場者が7万人ほどでしたが、今年は25万人に達しようとしています。最初に出演された時のお客様の印象と、今回のお客様の印象を、それぞれ教えていただけますか。
YOSHIKI: もう8回も来てるんですね。じゃあ僕、結構常連ですね(笑)。Japan Expoにはいつも招いていただいて、本当に感謝しています。なんだか一緒に成長してきている気がして、すごく嬉しいんです。最初に来た時は、まず何万人という数に驚きました。ヨーロッパに、これだけ日本のカルチャーに関心を持ってくれるファンの方たちがいるのかと。その数が年々増えて、今では新しい世代も日本のカルチャーに夢中になってくれている。本当に素晴らしいことだと思います。僕はアメリカに住んで30年近くになりますが、最近はほとんど同じくらいの頻度でヨーロッパにも来ているんです。ヨーロッパは、僕にとって憧れの場所。その場所で日本のカルチャーをこれほど大切にしてもらえているのは、とても光栄なことです。これからも必ず戻ってきます。いつか、Japan Expoのレジェンドと呼ばれるようになれたら嬉しいですね。
「来年は東南アジアそしてヨーロッパツアーへ。フランスにも必ず戻ってきます」
――Japan Expoへの変わらぬ思いに、フランスの観客も感謝しています。来週にはロサンゼルスでクラシックコンサートを2公演行うが、クラシック音楽を深く愛するフランスの聴衆が、パリでYOSHIKIのクラシック公演を見られる日は来ますか。
YOSHIKI: はい、来週はロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホールで、2夜連続の新しいコンサートをやります。今年はまず、自分のヘッドラインの公演をしっかりやる。そして来年は、ツアーを東南アジア、さらにヨーロッパへと広げていくつもりです。だから、フランスでの公演も必ず実現できると確信しています。ここに戻ってくるのを、本当に楽しみにしています。
「生きている限り、与え続けたい」 父の記憶とフィランソロピー
――先月、日本で初開催された「Global Citizen LIVE: Tokyo」でヘッドライナーを務めました。音楽とフィランソロピー(社会貢献活動)はあなたの核にあるものだが、日本初開催のステージに立った思いは。
YOSHIKI: あれは3〜4週間前でしたね。Global Citizenの音楽フェスティバルが日本で初めて開催されて、ヘッドライナーを務めさせていただきました。実は、スケジュールが非常にタイトで、出られるとは思っていなかったんです。でも主催者側が僕を諦めずに、「参加できないか」と声をかけ続けてくれた。僕自身も心から参加したかったので、実現できて本当に良かったです。
フィランソロピーの活動は、長いことやってきました。原点は、父です。僕は父のいない環境で育って、心に大きな傷を抱えていました。でも、周りの人たちの支えがあって、なんとかここまで来ることができた。だから、恵まれない境遇にいる子どもたちを支援したいと思って、20年ほど前に非営利の財団を設立したんです。以来、災害復興の支援から気候変動の問題、最近ではロサンゼルスの山火事の支援まで、続けてきました。
チャリティーは、僕にとってとても大切なものです。ときどき「自分はなぜまだ存在しているんだろう」と自問することがあるんです。でも、生きている限り与え続けることで、ここまで支えてくれた人たちに、少しでも恩返しができるんじゃないかと思っています。

「年内に、フランスとのサプライズがあります」
――フランスではシャンパンやファッションなど、音楽以外の分野でも活躍しています。まったく異なる世界をどう行き来し、フランスの人々とつながっていますか。
YOSHIKI: まず、僕自身が日々、ファンの皆さんに助けていただいている。だから皆さんに恩返しがしたい――その思いが、すべての活動の根っこにあります。シャンパンのプロジェクトも、バカラのグラスのデザインも、ありがたいことに自然とお話をいただいて、自然に広がってきたものなんです。本当に感謝していますし、光栄に思っています。実は近々、フランスとの新しいコラボレーションも控えているんですよ。サプライズなのでまだ言えませんが、年内には発表できると思います。
――以前パリで開かれたシャンパンの発表会に来られなかった。
YOSHIKI: そうなんです。ちょうどロサンゼルスの山火事があって。せっかく僕のシャンパンをフィーチャーしていただいた大きなイベントだったのに、どうしても行けなくて。あの時はチャリティーの活動に専念していました。飲んでいただけたんですね。ありがとうございます(笑)。
「音楽も、まだ成し遂げたとは思っていない」
――2023年のドキュメンタリー映画『YOSHIKI:Under The Sky』は素晴らしかったです。現在、新しい映画に取り組んでいますか。
YOSHIKI: はい、いま監督として、いくつかの映画プロジェクトを進めています。俳優業を追求するつもりはないんですけど(笑)、監督としてはまさに今、開発中です。1本はドキュメンタリー、もう1本は劇映画。聞いてくれてありがとう。
――常に時代の先を行くアーティストとして、この先5年で実現したい夢やプロジェクトは。
YOSHIKI: いい質問ですね。もちろん、あります。まず音楽。僕は自分の音楽のキャリアを、まだ「成し遂げた」とは思っていないんです。アルバムを作り、リリースして、音楽を次のレベルへ持っていく。それが目標です。それからファッション。僕には「YOSHIKIMONO」と「MAISON YOSHIKI PARIS」という2つのブランドがあります。この2つを次のステージに引き上げたい。実は飲料系のプロジェクトもいくつか進めていて、この数カ月のうちに発表される予定です。そしてチャリティー。これまで以上にやっていくつもりです。……我ながら、盛りだくさんですね(笑)。
「ロックスターには、一夜にしてなれない」

――前回は、プロデュースするグループ「XY」とともにこの場に来ていました。今後も若いアーティストを世界に送り出していくつもりですか。
YOSHIKI: 答えはイエスです。このエンターテインメントの世界は、本当に競争が激しい。だからこそ、若いアーティストと仕事ができるのは、いつもありがたいことだと思っています。世界中で数え切れないほどのアーティストが生まれていますが、新しいアーティストを世界に送り出すのは、本当に、本当に難しい。プロデューサーだけでも、アーティストだけでもダメで、関わる全員のコミットが必要なんです。僕は幸運にもここまで来られました。でも同時に、働いて、働いて、働き抜いてここまで来た。ロックスターやポップスターには、一夜にしてなれるものじゃない。とにかく必死に努力するしかない。それはアーティストとしても、プロデューサーとしても、痛いほどわかっています。だから、答えはイエスです。
「誰も信じてくれないけど、アルバムを3枚同時に作っています」
――キャリアの初期から現在まで、あなたの音楽はどう進化してきましたか。
YOSHIKI: 完全に変わりましたね。僕のバックグラウンドはクラシック音楽で、そこからロックへ行き、いまは様々なジャンルへと進化を続けています。東京でやった公演では、クラシックのコンサートにEDMの要素を採り入れました。来週のロサンゼルス公演では、さらにクロスオーバーを進めるつもりです。アルバムの話をすると誰も信じてくれないんですが(笑)、いま3枚同時に作っているんです。ロックのアルバム、クラシックのアルバム、そしてポップのアルバム。僕の音楽は、今も進化し続けています。
――フランスに来たとき、必ず楽しみにしているルーティンはありますか。
YOSHIKI: マカロンです(笑)。なんかすごい好きなのと、そうですね。意外とエッフェル塔のまわりを歩くのが好きなんです。
「少しずつ、前へ」 THE LAST ROCKSTARS、そして再会の約束
――THE LAST ROCKSTARSは今、少し静かな状態にあります。現状を聞かせて下さい。
YOSHIKI: 多くのプロジェクトが、僕の首の手術でいったん止まってしまったんです。THE LAST ROCKSTARSの最後のステージからは、1年半ほどになりますね。ただ最近では、Global CitizenのステージにHYDEが参加してくれましたし、MIYAVIとも、いま新しい曲を一緒に作っているところです。だから、THE LAST ROCKSTARSの新しい動きも、これから起こるかもしれません。僕はまだ、このステージに戻ってきたばかり。少しずつ、前に進んでいきます。
会見の最後、YOSHIKIは集まった記者たちにこう語りかけた。
YOSHIKI: 今日は来てくれて、取材してくれて、そして支えてくれて、本当にありがとうございます。皆さんのおかげで頑張れています。いまパリはとても暑いですけど、どうか健康に気をつけてください。また近いうちに、お会いできるのを楽しみにしています。

3度の手術を越えたばかりのアーティストが語ったのは、そのほとんどが未来のことだった。来年の欧州ツアー、同時進行の3枚のアルバム、そして「Japan Expoのレジェンド」への道。初出演から19年、パリとの物語はまだ序章にすぎない。














