大手ストリーミングサービス各社が解約率の高さに頭を悩ませる中、ある新興企業が、視聴者を定着させるためのインタラクティブでAIを活用した手法を編み出した。ハリウッド業界誌「Deadline」が7月8日伝えた。

これまでステルスモードで運営されてきた「VersusGame」は、Disney+、Paramount+、HBO Maxといったプラットフォームに加え、NFLやライオンズゲート、Redditなどのコンテンツプロバイダーとも提携してきた。

Versusが設計したAIオーバーレイは、視聴者にインタラクティブな体験を提供し、デジタルプラットフォームで視聴する番組や読むコンテンツに「一緒に参加」できるようにする。視聴者がスマートフォンでスポーツ生中継、ドラマ、記事、ストリーミングなどのコンテンツを撮影すると、Versusがゲーム、クイズ、投票、チャレンジを生成。視聴者は予想を立てたり、ランキングで競い合ったり、賞品を獲得したりできる。

このゲーム化された体験は、TikTokやInstagramなどを操作しながらの「ながら見」でなく、ストリーミングプラットフォームとの積極的な関わりを促すものだ。同社によれば、顧客のセッション時間を16%延長し、継続率を4.5〜9.5%向上させることに貢献したという。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「

ドラマやスポーツ中継を観ながら、視聴者にスマホでクイズや予想ゲームに参加してもらう——そんなAIの仕掛けで配信サービスの解約を防ぐ新興企業Versusが、注目を集めている。面白いのは、その発想の転換だ。
 
配信各社にとって、視聴中のスマホは長年の敵だった。番組の途中でTikTokやInstagramに注意を奪われ、視聴の熱が冷めていくからだ。Versusはこの敵を、味方に変えた。スマホを番組にかざせば、AIがその場面に合わせたクイズや投票を作り出し、予想を競い合える。
 
スマホをいじりたい手を、番組から引き離すのではなく、番組への参加に使わせるのだ。実際、視聴時間は16%延び、継続率も向上したという。ながら見を禁じるのではなく、ながら見の習慣ごと番組体験に取り込む。スマホと共存する時代の視聴設計として、実に理にかなった一手であることが読み取れる。」