米ホワイトハウスは2026年9月3日、公式サイト内に「Arcade」と題したコーナーを開設した。専用ドメインarcade.govからもアクセスでき、ブラウザ上で動くレトロ風のゲーム5本が並ぶ。デジタル戦略を統括するケイラン・ドー大統領副補佐官は、この試みを「操作できる政策」と説明している。

収録タイトルはいずれも政権の看板政策が題材だ。その中でも、最も批判を集めるのが『Rio Run』である。携帯電話ゲーム「スネーク」を下敷きに、国境政策を統括するトム・ホーマン氏を思わせるキャラクターがリオ・グランデ川沿いで越境者を追いかけ、捕まえた相手はオレンジ色の囚人服姿で列に連なる。『Build the Wall』は落ち物パズル型で、ブロックを積んで壁を築きながら「押し寄せる群れから国境を守れ」と指示する。

残る3本は国境から離れる。『Supply Line』は流れてくる食品のうち、政権が掲げる健康政策「Make America Healthy Again」の基準に合わない品をはじく内容だ。『Flappy Bill』は法案を運ぶハクトウワシを操作し、『Trump Savings Tycoon』は降ってくる金塊や札束を集めて、2025年から2028年までに生まれた子どもに1000ドルを積み立てる制度の口座を満たしていく。

テトリス側が「許諾していない」と表明

告知の手法も同様だ。ホワイトハウスはSNS投稿で、Xbox、PlayStation、任天堂の起動画面を模したアニメーションを使用。セガのロゴを「MAGA」へ変形させる演出もあり、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の楽曲が使われたとの指摘もある。

テトリスカンパニーは9月4日、『Build the Wall』の制作に一切関与しておらず、ブランドや知的財産の使用を許諾していないと表明した。「著作権侵害は極めて深刻に受け止めている」とも述べ、対応を検討中だとしている。一方、セガ、マイクロソフト、ソニーは今回のアーケードについて沈黙を保っていると報じられている。政治的な軋轢を避ける判断と受け取ることもできるだろう。

今回の事例は日本のIPも例外ではない。というのも、ホワイトハウス公式Xは2026年3月以降、『ポケモン』や「遊☆戯☆王」の意匠を無断で用いた画像・映像を繰り返し投稿し、株式会社ポケモンと遊戯王公式がそれぞれ「許可していない」と声明を出しているからだ。4月17日には衆議院外務委員会でも取り上げられ、外務省も米側に複数回、使用中止を申し入れている。

「政府製ゲーム」自体は前例がある

ただし、政府機関がゲームを広報に用いた例は珍しくない。2002年に米陸軍が公開した『America’s Army』は、志願者数の落ち込みを受け、陸軍の広報予算を投じて開発された無料FPSだ。批判を浴びつつ2022年まで約20年間運営された。ただし目的は新兵募集と訓練内容の周知であり、政策の是非を得点競争に置き換えるものではなかった。

こうした政治的な主張をゲームの仕組み自体に埋め込む手法は「persuasive game」と呼ばれ、担い手は主に独立系の開発者やNGOだった。トランプ政権は2026年5月にも、不法移民の逮捕実績を宇宙人になぞらえる「aliens.gov」を開設している。