YouTube上では、虚偽の主張を広める、AIによって生成(または支援)された政治的コンテンツが氾濫している。こうした動画の背後には、政治活動家や諜報機関ではなく、AIによって加速した「ゴーストクリエイター(正体を隠した代作者)」の存在がある。米新興メディア「セマフォー」(Semafor)が報じた。

ゴーストクリエイターネットワークの黒幕は、クライアントに代わってクリエイターアカウントを迅速に立ち上げ、バズを起こすことを約束するプラットフォームを運営する「グロースハック企業」(データ分析を基に「売れる仕組み」をサービス自体に組み込む企業)だ。

こうした企業は、オンラインのトレンドやニュースを注意深く監視し、時事的な動画を次々と量産。YouTubeのアルゴリズムの波に乗ってバズを起こし、広告収入の一部を得ようとしている。あるグロースハック企業が関連するネットワークだけで4,500万回以上のYouTube再生回数、コメント9万件超を獲得している。

AI生成コンテンツの大規模追跡を手がけるRiddance AIによると、これらのグロースハッカーが作成したチャンネルは、YouTubeのAIラベルを回避するために、実在の俳優を起用。俳優らは、AIが生成・支援して作成された定型的な台本を読み上げることで報酬が得られる。グロースハック企業のVireloxが掲載した求人情報では、1本26ドルが提示されている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「セマフォーの調査報道が、AI量産コンテンツの新しい段階を映し出した。YouTubeに氾濫する政治動画の一群は、AIが生成・支援した定型の台本を、1本26ドル(約4,100円)で雇われた実在の俳優が読み上げる方式で作られていたという。狙いは明快である。各プラットフォームのAI検知とラベル表示は、合成音声やAIアバターを見つける仕組みだ。画面に本物の人間がいれば、網をすり抜けられる。AI対策の進歩が、皮肉にも「人間の顔だけ借りる」回避術を生んだ。報道を受け、YouTubeは関連20チャンネルを速やかに削除した。ただ、その理由が興味深い。適用されたのはAIポリシーでも虚偽情報対策でもなく、「スパムと欺瞞行為」の規定だった。量産と偽装は裁けても、AI利用や内容の真偽そのものを裁く物差しは、まだ執行の主役になれていないのである。人間とAIの混合が当たり前になる中、何を根拠に線を引くか。検知と回避のいたちごっこは、次の周回に入った。」