スクウェア・エニックス・ホールディングス(HD)が2026年8月10日に発表した2027年3月期第1四半期(26年4〜6月)決算で、ゲームソフト販売本数に占めるダウンロード(DL)版の比率が約9割に達した。

「HDゲーム」とMMOを合わせた総販売本数738万本のうちDL版が665万本、パッケージ版は73万本にとどまる。収益構造が流通在庫を前提とした物理販売から切り離されつつあることを示す数字だ。

販売本数1.8倍に対し、営業利益は6倍

注目すべきは、本数の伸びと利益の伸びが釣り合っていない点だ。販売本数は前年同期の401万本から738万本へ1.8倍に増えたが、HDゲーム部門の営業利益は10億円から61億円へ約6倍に拡大した。

売上高は89億円から177億円へほぼ倍増しており、公表値から算出した営業利益率は11.2%から34.5%へと20ポイント以上改善したことになる。

この非線形の増え方を説明する最大の変数がDL比率だ。パッケージ版は前年同期の56万本から73万本へ17万本増にとどまったのに対し、DL版は345万本から665万本へ320万本積み上がった。増加分の約95%がDL版である。DL販売には製造原価も物流費も返品リスクも発生しない。売上2倍で利益6倍という構造は、この差分から生まれている。

「新作」と並置された「カタログタイトル」

同社は増収増益の理由として、新作に加えて過去に発売した「カタログタイトル」の販売が伸びた点を挙げた。当四半期の新作は『ファイナルファンタジーVII リバース』のニンテンドースイッチ2/Xbox Series X|S/Microsoft Store版と、HD-2Dシリーズ初の完全新作アクションRPG『冒険家エリオットの千年物語』である。前者は既存タイトルの新ハード展開であり、厳密には「新作」と「カタログ」の中間に位置する。

この構図はカプコンが先行して確立したモデルと重なる。同社の26年3月期は販売本数5907万本のうち新作960万本、過去作の「リピート販売」が4946万本。DL比率は93.0%に達し、27年3月期計画ではパッケージ比率を4.6%まで下げる見通しだ。スクエニの約9割は、その背中がようやく視野に入った位置にある。

地域構成が示すロングテールの実像

地域別内訳も構造転換を裏づける。日本141万本に対し欧米は459万本と全体の6割超、アジアその他は137万本だ。欧米ではSteamやPlayStation Storeの大型セールが恒常化しており、値引きを起点としたカタログ販売がロングテールで積み上がる。旧作が数年にわたり収益を生む市場構造が、本数の底上げに直結している。

ソニーグループが公表した26年度第1四半期のPS向けソフトDL版比率は82%。プラットフォーム全体が8割にとどまる中でパブリッシャー単体が9割を超える差は、パッケージ依存の高いタイトル群がなお残ることを示す。

中計最終年度、通期予想は据え置き

スクエニHDは24年5月、中期経営計画「Square Enix Reboots and Awakens」で「量から質」への転換と主要タイトルのマルチプラットフォーム化を掲げた。25年3月期、26年3月期はいずれも減収増益であり、利益改善の主因は原価構造の見直しだった。今回は改革が初めて増収を伴った四半期にあたる。

もっとも、前年同期は売上高592億円(前年同期比15.2%減)、営業利益90億円(同16.8%減)と減収減益であり、比較対象が低い点は割り引く必要がある。全社の営業利益170億円は通期予想410億円の約41%を消化する水準だが、同社は通期予想を据え置いた。MMO部門も売上高は96億円から127億円へ伸びた一方、今後のコンテンツ展開に向けた先行費用の計上で営業利益は36億円と前年並みにとどまる。

中計最終年度の初動としては強い数字が出た。ただし、カタログ収益がどこまで恒常的な基盤になるかは、下期に持ち越された検証課題である。