世界中を熱狂させたFIFAワールドカップ2026は、米メディア大手フォックス傘下のストリーミングサービス「Fox One」に大きな追い風となった。

サブスクリプション・エコノミーに関する米国の市場データ・プラットフォーム「アンテナ(Antenna)」によると、6月に280万人が同サービスに加入。うち40万人は6月11日の大会開幕日に契約した。昨年8月にサービスを開始したFox Oneにとって、今年1月のNFLプレーオフ期間中に記録した110万人の加入者数を大きく上回る、過去最高の水準を記録した。

Fox Oneは、フォックスのあらゆるコンテンツを定額配信するアプリ。FIFAワールドカップ2026大会では、フォックスの地上波ネットワークおよび姉妹ケーブル局のFS1で放送されたトーナメント全104試合を中継した。

アンテナは「ワールドカップはFox Oneにとって『既存顧客の再活性化』ではなく、『新規顧客獲得』の機会として機能した」と指摘。6月の総加入者増加数の93%が新規で、再契約はわずか7%にとどまった。

7月19日の決勝戦は、米国テレビ史上最も視聴者数の多かったサッカー中継となった。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「米大手テレビ局フォックスの配信サービスが、W杯の1カ月で280万人という記録的な加入者を集めた。開幕日だけで40万人。だが、祭りのあとにこそ本当の勝負がある。W杯目当てで入った人々は、大会が終われば解約の理由を探し始める。実際、配信業界では「観たい番組が終わればためらいなく解約する」流れが強まっており、あのNetflixでさえ人気作の谷間の解約に悩む。イベントで集めた客は、イベントとともに去るのが常だ。
フォックスの手元には、アメフトや野球という次の中継が控えており、そこへどれだけ橋渡しできるかが試される。W杯は客を連れてきたが、引き留めるのは日々の編成の仕事だ。280万人という数字の真価は、大会中ではなく、半年後の残存率で判定される。スポーツ興行の熱狂を、いかに日常の習慣へ変換するか——配信ビジネスの永遠の宿題が、ここでも問われることが読み取れる。」