全米放送事業者協会(NAB)は9月3日、新車にAMラジオ搭載を義務付ける法案について、9月14日の週に米国下院で単独採決が行われる予定だと明らかにした。

議会および全米で超党派の圧倒的な支持を得ている同法案にとって、重要な前進となる。

この法案は、運輸長官に対し、1年以内に規則制定手続きを完了するよう義務付けるもので、米国で販売される全ての車両に、購入者に追加費用を負担させることなく、AM受信機を標準装備として搭載することを義務付ける内容となっている。同法案には、下院で317人、上院で61人の共同提案者がいる。

NABのカーティス・ルゲイト社長兼CEOは「リスナーからは、AMラジオが緊急時における不可欠な命綱であると同時に、信頼できるニュース・情報の源であり、全国のコミュニティをつなぐ重要な架け橋であるという声が、はっきりと届いている。今こそ、この取り組みを完遂すべき時だ」とコメントしている。

全米宗教放送協会(NRB)の公共政策担当バイスプレジデントを務めるニック・アンダーソン氏は「自動車メーカーが単にコストが安かったり手間がかからなかったりするという理由だけでAMラジオの搭載を省くことを許容すれば、同じ論理が最終的にはFMラジオにも適用され、車内での無料ラジオ放送の将来を脅かす恐れがある」と警鐘を鳴らした。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「米国で、新車へのAMラジオ搭載を義務づける法案が来週にも下院で採決される。EV各社がAMの搭載をやめ始めたことへの、超党派の対抗立法である。反対する自動車業界の言い分にも耳を傾けたい。EVがAMを外すのは物理の問題だ。AMはノイズに弱く、モーターの電磁干渉が雑音を乗せる。対策の遮蔽やフィルターは1台あたり最大70ドル、業界全体で7年38億ドルとの推計があり、遮蔽材の重さは航続距離も削る。それでも議会が動くのは、米国が日本人の想像を超えるラジオ大国だからだ。エジソン・リサーチによれば、米国人が音声メディアに使う時間の33%を今もAM/FMラジオが占める。2位のYouTube音楽視聴の2倍超で、広告付き音声に限れば6割を超える。そして東日本大震災の日本で、通信網が壊れるなかAMが命綱になったように、米国もAMを緊急警報網の骨格と位置づける。radiko経由の配信とFM転換が共に進む日本とは対照的に、電波を法で守る道を選ぶのか。採決は来週だ。」