Spotifyは5月21日、ファンがAIを活用したカバー曲やリミックスを作成できる新ツールの提供に向けて、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)と原盤・出版カタログのライセンス契約を締結したと発表した。

この新ツールは、Spotifyプレミアムユーザー向けの有料アドオンとして提供され、作成された楽曲はSpotify全ユーザーが再生可能となる。アーティスト・ソングライターの参加はオプトイン制。アーティストやソングライターにとって、既存のSpotifyからの印税に加え、新たな収益源となる。

現時点では、新機能の基盤となる生成AI技術の詳細や、具体的な価格・リリース日については明らかにされていない。

Spotifyのグスタフ・ソーデルストロム共同CEOは「音楽業界の難題を解決することこそが弊社の使命であり、次はファンによるカバー曲やリミックスが対象となる」とコメント。「われわれが構築しようとしているものは、アーティストやソングライターの同意、クレジット表記、そして報酬を基盤としている」と説明した。

UMGのルシアン・グレンジ会長兼CEOは「音楽ビジネスにおける最も価値あるイノベーションは、常にアーティストとファンの距離を縮めるもの」と主張。「この原則は、人間の芸術性を支え、ファンとの絆を深め、アーティストやソングライターに新たな収益機会を創出することを目的とした、AIを活用したこの先駆的な『スーパーファン』イニシアチブの根幹を成すものだ」と語った。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「予想通りの展開だ。筆者がMusicmanで今年2月に注目し、4月のMusicman大学で詳細に解説してきたSpotifyの「責任あるAI」音楽プロダクト構想が、UMGとの具体的なライセンス契約として現実化した。Premiumユーザーは有料アドオンで、参加アーティスト・ソングライターの楽曲をAIでカバー・リミックスできるようになる。3つの基本原則は「同意(Consent)・クレジット表記(Credit)・報酬(Compensation)」だ。注目したいのは、対象を「カバーとリミックス」に絞った設計の巧みさにある。ファンが二次利用するのは、自然と人気のヒット曲、つまりメジャーレーベルのカタログ。AI機能を使えば使うほど、既存ヒット曲の二次利用料売上が増える構造になっている。AIが新規楽曲を量産して既存カタログと競合するのではなく、AIが既存ヒットの価値をさらに引き出す世界──Suno・Udio型の対立構造に対し、メジャーが乗りやすい落としどころにSpotifyは見事に着地した。」