音楽生成AI「Suno」は、2025年11月に発生し、5,530万人のユーザーの個人情報が流出したとされるデータ漏洩事件を巡り、新たな集団訴訟に直面している。

この事件を巡っては、Sunoは2025年11月に情報漏洩を把握していたものの、公表はせず、影響を受けたユーザーへの通知もしていなかったとされる。TechCrunchが今年7月に事件を報道し、Suno広報担当者が認めるまで、約8カ月にわたり事件が公にされていなかったこととなる。

マイケル・ベッカム氏を代表とする原告が9月3日に提起した新たな訴訟では、ベッカム氏は、遅くとも2024年の夏までに自身のGmailアドレスを使用してSunoのアカウントを作成しており、情報漏洩通知サービス「Have I Been Pwned」が、そのアドレスが盗まれたSunoのデータセットに含まれていることを特定したと主張。「適時かつ完全で、個別の情報が提供されなかったため、原告が的を絞った保護措置を講じる能力が損なわれた」と訴えている。

今回の訴訟は、既に提起されている集団訴訟に関連するもので、ベッカム氏は「手続の調整や併合により、司法および当事者のリソースが節約されると期待している」としている。この訴状が提出される10日前には、地方裁がSunoを相手取った既存のデータ漏洩集団訴訟2件を1件に統合することを命じていた。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「Sunoの法廷は、いまや二正面である。一方に、大手レーベルとの著作権訴訟。他方に、5,530万人分の情報流出を巡る集団訴訟群で、今回の提訴は統合命令の10日後に加わった3件目だ。興味深いのは、この二つの戦線が、実は一つの事件で繋がっていることである。昨年11月のハッキングでは、ユーザー情報と共に同社の旧ソースコードも流出したとされ、そこにはYouTubeなどから音源を取得する手順の記述が含まれていたと報じられた。この流出が、著作権訴訟でSunoの学習データの入手経路が争点化する一因になった経緯がある。守りの穴が、まったく別の裁判の証拠を生んだ格好だ。同社は先の答弁書でYouTubeからの取得自体は認め、法律論で争う構えに移っている。急成長AI企業にとって、セキュリティは単なる情報管理ではなく、訴訟戦略の土台でもある。攻めの開発と守りの体制、その均衡が問われる局面が続く。」