Googleは7月21日、生成AI「Gemini」と『ドラゴンクエスト』シリーズがコラボレーションしたリアルイベント「ジェミニクエスト」を発表した。
イベントは7月30日から8月9日にかけて東京・渋谷、原宿エリアで開催され、参加者はGeminiを使って「メラゾーマ」や「マダンテ」といった呪文を唱える自身の姿を生成できるほか、街中に設置されたスライムやキラーマシンの立像と連動した体験を楽しめるという。
性能競争から「体験競争」へ変わる生成AI市場
生成AI市場では、OpenAIのChatGPT、GoogleのGemini、AnthropicのClaude、Microsoft Copilotなど主要プレイヤーによる競争が続いている。当初は文章生成や推論能力など基盤モデルの性能向上が競争の中心だったが、各社の技術水準が接近するにつれ、ユーザーにどのような価値や体験を提供するかが、これまで以上に重要な差別化要素となった。
GoogleもGeminiを検索や業務支援にとどまらず、AndroidやWorkspace、Pixelなど自社サービスへ幅広く展開してきた。今回の『ドラゴンクエスト』との協業も、Geminiを日常のさまざまな場面で体験してもらう取り組みの一環と見ることができる。
技術提携からブランド協業へ進化した両社の関係
実はGoogleと『ドラゴンクエスト』の関係は今回始まったものではない。2019年にサービスを開始した『ドラゴンクエストウォーク』ではGoogle Maps Platformが採用され、現実世界の地図情報をゲームへ反映する基盤として活用されてきた。その後もGoogle Developersでの技術事例の公開やGoogle Fitとの連携、Health Connectへの移行など、Googleは技術パートナーとしてシリーズを支えてきた経緯がある。
約7年間にわたる技術面での協力関係を経て、今回はGeminiを前面に打ち出した共同プロモーションが実現した。両社の関係は技術提供を中心とした協力から、ブランド価値を相互に高める取り組みへ発展したとみることもできる。
スクウェア・エニックスもAI活用を加速
では、スクウェア・エニックス側のAI活用はどのように進んでいるのだろうか。同社は『ドラゴンクエストX オンライン』において、Geminiを活用した対話型AIキャラクター「おしゃべりスラミィ」の導入を予定している。プレイヤーの質問に答えたり、冒険の進行状況に応じて助言を行ったりする「冒険の相棒」として設計されており、生成AIをゲームプレイの支援へ取り入れる試みとして注目を集めた。
こうした方向性は、『ドラゴンクエスト』シリーズが長年培ってきたゲームデザインとも重なる。1990年発売の『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』では、仲間キャラクターが自律的に戦う「AI戦闘」を導入。「ガンガンいこうぜ」や「いのちだいじに」といった作戦システムは、AIがプレイヤーを支援するゲームデザインとしてシリーズを代表する要素となっている。現在の生成AIとは技術的な仕組みこそ異なるものの、「AIが冒険を支える存在」という発想は、35年以上前からシリーズに受け継がれてきた。
IPとAIの融合が示す新たなマーケティング
生成AI市場では、各社が基盤モデルの性能向上を続ける一方、その差は一般ユーザーから見えにくくなりつつある。
だからこそ重要になるのは、AIそのものではなく、「AIを使って何を体験できるのか」を伝えるブランド戦略だ。ゲームやアニメ、映画といった強力なIPとの協業は、その有力な手段の一つとなる可能性がある。
『ドラゴンクエスト』という国民的IPとGoogle Geminiの組み合わせは、生成AIの普及を後押しするマーケティング施策であると同時に、AI企業の競争軸が「性能」から「体験設計」へ移りつつあることを示す象徴的な出来事ともいえそうだ。














