愛知・名古屋観光誘客協議会は、『ストリートファイター6』とのコラボレーション企画を7月25日より順次実施すると発表した。運営は名鉄観光サービス株式会社が担当し、愛知県全域を対象とした観光キャンペーンが展開される。
企画の中心は、県内54市町村・約300か所を巡るデジタルスタンプラリー「AICHI WORLD TOUR」だ。2026年7月25日から2027年2月28日まで開催され、観光施設や神社仏閣などでQRコードを読み取ることで、「EXP(経験値)」やゲーム内通貨をモチーフとした「ゼニー」、キャラクター画像などを獲得できる。EXPを集めることでレベルアップするほか、入手したゼニーは景品応募に利用可能。ランキング機能やレベルアッププレゼントも用意されており、ゲームでおなじみの成長・報酬の仕組みを観光体験に応用した構成となっている。
『ストリートファイター6』のゲーム体験を観光へ応用
企画名の「AICHI WORLD TOUR」は、『ストリートファイター6』のシングルプレイモード「WORLD TOUR」を想起させる。同モードでは各地を巡って師匠と出会い、経験値を得てキャラクターを成長させる。公式に両者の関係性が明言されているわけではないが、「各地を巡る」「経験値を集める」「成長する」という共通点は多く、ゲームのプレイ体験を意識した施策とみられる。
同時に、『ストリートファイター6』特別デザインの「あいち・なごや周遊観光パスポート」も販売される。対象の美術館・博物館などでは描き下ろしイラストのクリアカードが配布され、オリジナルグッズの販売も予定されている。スタンプラリーに加え、文化施設の利用や物販までを組み合わせることで、来訪から周遊、消費までを一体的に促す構成だ。
「聖地巡礼」とは異なる新たなコンテンツツーリズム
ゲームIPと自治体が連携した観光施策自体は珍しくない。すでに『ポケットモンスター』や『ONE PIECE』など数多くの前例があり、「コンテンツツーリズム」として各地で展開されてきた。ただしその多くは、作品の舞台やキャラクター人気そのものを観光資源として活用するものだった。
一方、本件が従来型の施策と異なるのは、キャラクターだけでなく「経験値を集める」「レベルアップする」「報酬を獲得する」といったゲームデザインそのものを観光体験に取り込んでいる点だ。作品の舞台を訪れる「聖地巡礼」とは異なり、ゲームのルールを現実の行動設計へ応用する「ゲーミフィケーション」の性格が強い。また、現実世界そのものを遊び場として利用した位置情報ゲーム『Pokémon GO』とも構造が異なり、本施策ではゲーム側ではなく自治体側が、ゲームの報酬設計や成長システムを観光へ応用している点が特徴といえる。
そして本件は、規模の面でも注目に値する。一般的なスタンプラリーは数十か所程度を対象とすることが多いのに対し、「AICHI WORLD TOUR」は県内54市町村・約300か所と広範囲をカバーする。特定の観光地への集客にとどまらず、県全域の回遊を促すことで、滞在時間や地域消費の拡大を狙う構成といえる。『ストリートファイター』シリーズは世界的な知名度を持ち、現在もeスポーツシーンで高い人気を維持するIPであることから、国内ファンだけでなく海外ファンからも注目されるだろう。
ゲームデザインは地域振興の資源となるか
ゲームの仕組みは近年、教育や健康、防災など幅広い分野へ応用されている。本施策もゲームIPを広告として活用するにとどまらず、ゲームデザインそのものを社会へ取り込む試みの一例といえるだろう。愛知・名古屋観光誘客協議会による今回の取り組みは、その変化を象徴する事例として話題の的になりそうだ。














