Napster(旧Infinite Reality、昨年3月にNapster買収)による30億ドル(約4,810億円)の資金調達が頓挫したことを巡り、同社の株式約2億4,000万株を「不正に取得」したとされる人物に対し、2件の連邦訴訟が進行中だ。

ニューヨーク南部地区連邦検察局は6月11日、この詐欺容疑者に対する刑事起訴を正式に発表。米証券取引委員会(SEC)も同日に、関連する民事訴訟を提起した。

両訴訟は、Napsterが資金調達ラウンドに関連して「不正行為」の被害に遭っていたことを認めてから約7カ月後に提起された。Napsterは昨年1月(Infinite Reality時代)、「グローバルなテクノロジーと不動産投資をポートフォリオとする個人投資家から」30億ドルを確保したと発表したが、同年11月に履行されない見通しだと明らかにした。

起訴状によると、被告人はチャールズ・コール(57歳)。2024年6月から今年3月にかけて、Napsterから「少なくとも2億3,900万株を不正に取得する計画を実行した」として、詐欺などの罪で起訴された。

SECの訴状では、コールに加え、彼の弁護士であるトーベン・ウェルチ、およびコールと関連する3つの「ペーパーカンパニー」を被告として名指し。Napsterは「コールが33億6,000万ドルを投資すると約束したにもかかわらず、彼から一度も資金を受け取ったことがなく」、一方のコールは「自身の詐欺行為から利益を得た」とされる。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「Napsterの軌跡は、音楽ストリーミングの歴史そのものでもある。1999年にファイル共有として登場、2001年に閉鎖。2003年にはサブスクリプション型に転身し、Spotifyのサービスイン(2008年)の5年前から「音楽を所有しない」モデルを実験してきた。その後Best Buy、Rhapsody、MelodyVR、Hivemind+Algorandと所有者を転々とし、2025年にInfinite Reality(フロリダのテック企業、買収額2億700万ドル/約326億円)が獲得、社名もNapsterへ。今回の詐欺事件は、2026年にNapsterがさらに「AI音楽プラットフォーム」へと姿を変えようとした矢先の出来事だ。「ファイル共有→サブスクの先駆け→AI」と三つの時代を渡ってきたブランドが、転換点でまた揺れている格好と言えそうだ。Napsterの物語は拙著1冊目「破壊の章」で小説化してある(作者的には一番自信のある章)ので一読いただければ幸いだ。」