シリーズ化のゴーサインが出るのが稀な昨今のハリウッドでは、クリエイターたちが脚本に基づいた物語を伝えるためにますますソーシャルメディアを活用するようになっており、中でもInstagramの勢いが増している。ハリウッド業界メディア「The Ankler」が7月22日報じた。

脚本家のアーロン・カロ氏とマイケル・ドネガー氏は、テレビ番組開発の行き詰まりに陥っていた複数のプロジェクトを抱えていた。コメディ『フレンド・マテリアル』をハリウッドのバイヤーたちに売り込む代わりに、自分たちで制作することに決め、かき集めた1,000ドル、ドネガーが所有していたカメラ、友人たちの少しの助けを借りて、12エピソードをさっと作り上げ、Instagramへの投稿を始めた。

それから3か月も経たないうちに、『フレンド・マテリアル』の再生回数は150万回近くに到達。既にいくつかのブランドからシーズン2の支援について打診が寄せられている。最終的な目標は、3分間のInstagram用エピソードを、ストリーミングサービスやテレビ局向けの30分シリーズに発展させることで、カロ氏は「ソーシャルメディアが私たちにもたらしてくれたのは、視聴者層とコミュニティを築く機会。今ではプロデューサーとの打ち合わせで、『これだけの人がすでに視聴してくれているんです』とアピールできるようになった」と話す。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「米国の脚本家2人が、面白い風穴を開けた。企画の行き詰まりを機に、コメディ『フレンド・マテリアル』の売り込みをやめ、約16万円と手持ちのカメラで3分×12話を自作し、Instagramへ投稿したのだ。3カ月足らずで再生は150万回に迫り、ブランドから続編支援の打診が届いた。ゴーサインが滅多に出ない今のハリウッドで、待たずに世へ問う道が実証された格好だ。歴史を振り返ると、新しい「物語の作り手」という職業は、技術が生んできた。文字の印刷が新聞や雑誌を生み、連載小説とともに職業小説家が生まれた。画像印刷が誌面に絵物語を載せ、漫画家という職業が育った。表現を安く大量に届ける手段が現れたとき、才能は職業として発現する。いまスマホとSNSが「誌面」を無料にし、映像生成AIが撮影や編集の壁も下げていくだろう。連載小説家、漫画家に続く「ショートドラマ作家」誕生の前夜かもしれない。」