株式会社クロス・マーケティングが発表した2026年版のeスポーツ実態調査は、日本のeスポーツ市場が新たな局面を迎えつつあることを示唆している。

同社の調査によると、eスポーツ大会への参加経験者は3%、観戦・視聴経験のみを含めても20%だった。一方で、「今後大会を観戦・視聴したい」と回答した人は40%に達している。競技への参加率は依然として限定的である一方、観戦に対する潜在的な需要はその倍に達しており、「プレーするコンテンツ」だけでなく「見るコンテンツ」としての存在感が高まりつつあることがうかがえる。

「競技人口の拡大」が市場成長の前提だった

2018年前後は、日本で「eスポーツ元年」と呼ばれた時期である。日本eスポーツ連合の設立やプロライセンス制度の導入を契機に、自治体による大会開催や高校eスポーツ部の設立など、競技人口の拡大を目的とした取り組みが相次いだ。

当時は、競技者が増えれば市場も拡大するという、従来のスポーツ産業に近い発想が市場形成を支えていた。

実際、クロス・マーケティングの過去調査では、参加・視聴経験率は2021年以降増加傾向を示し、2025年には25%まで上昇した。しかし、今回の調査では20%となり、前年を下回る結果となった。

もちろん、単年の調査だけで市場の縮小を結論づけることはできない。ただ、競技人口が右肩上がりに拡大する初期フェーズから、市場がより成熟した段階へ移行しつつある可能性はある。

一方で、市場全体は成長を続けている。『日本eスポーツ白書2025』では、国内eスポーツ市場規模は約161億円となり、今後も拡大が続くと予測されている。市場規模が拡大する一方で参加・視聴経験率が横ばい、あるいは一時的に減少した今回の調査結果は、市場の成長要因が単純な競技人口の増加だけでは説明できなくなりつつあることを示唆している。

「観るeスポーツ」が市場価値を左右し始めた

今回の調査で、今後視聴したい大会として最も多かったのは「世界大会・国際大会」であり、「国内大規模大会」「インフルエンサー・配信者主催大会」「プロ公式リーグ」が続いた。

世界大会への関心が最も高かったことは、日本のユーザーが競技レベルだけでなく、世界最高峰の舞台や国際大会ならではのスケール感にも魅力を感じている可能性を示している。

近年では、『ストリートファイター6』の世界大会や『VALORANT Champions』、『League of Legends World Championship』などが世界規模で大きな視聴者を集めている。競技性はもちろん、スター選手の存在や国際対抗戦ならではの物語性が、多くの視聴者を引き付ける要素になっている。

また、今回の調査ではインフルエンサー・配信者主催大会への視聴意向も高かった。これは、日本のeスポーツ市場において、公式大会だけでなく、配信者コミュニティを起点としたイベントも重要な接点になりつつあることを示している。

海外ではスポンサー企業が視聴者数やライブ配信での露出、広告換算価値などを重視する傾向が強まっている。日本でも、配信コンテンツそのものが市場価値を支える重要な要素だといえるだろう。