サイバーコネクトツーの松山洋社長は、フランスで最も愛される日本のゲームクリエイターのひとりだ。『NARUTO-ナルト-』ナルティメットストームシリーズや『ドラゴンボールZ KAKAROT』『.hack』を世に送り出したスタジオの社長、というだけではない。
日本でJapan Expoの名が知られるずっと前の2008年から毎年パリに通いつめ、ナルトのコスプレでパリマラソンを完走した「伝説」の持ち主でもある。CC2設立30周年とJapan Expo25周年が重なった今年、両者のコラボステージが初日7月9日11時、Také Stageで開かれた。
(取材・文:MEDIAMIXI編集長 榎本幹朗)
「相変わらず年齢不詳やな、俺は」──スクリーンに映る18年
ステージは、開演からしばらく映像の音が出ないというゆるい立ち上がり。だが松山氏は慌てない。「音が出なくても、映像が出てるだけマシ。そんなフランスが私は大好きです」と笑わせて、CC2の30年とJapan Expoの25年を振り返るスライドを始めた。
初参戦は2008年。当時の写真がスクリーンに映ると「若いなあ。ふさふさやな」と自らツッコミを入れる。隣で通訳を務めたMCは、実はその頃セガの社員として客席側にいたという因縁も明かされた。2010年からはバンダイナムコの仕事で、ナルトのコスプレをまとって毎年フランスでプロモーション。『ナルティメットストーム2』はJapan Expoで賞も獲得した。サイン会で指定Tシャツを着せられ「せっかくコスプレ持ってきたのに『脱げ』って言われて」という理不尽な思い出も、今や笑い話だ。衣装は年々豪華になり、後年にはバンダイナムコが全身50万円のコスチュームを制作するまでになった。

ナルトのコスプレで42.195km、タイムは5時間5分
そして飛び出したのが、あのパリマラソンの話だ。2012年、『ナルティメットストームジェネレーション』のプロモーションとして、ナルトのコスプレでフルマラソンに初挑戦。しかしこの年は22km地点で無念のリタイアに終わる。1年間トレーニングを積み、翌2013年にリベンジ参戦。パリマラソンは制限時間を超えると失格で、回収車が背後から迫ってくる。「そいつに抜かれたら終わり。なんとか抜かれんように頑張って、5時間5分でちゃんと完走しました」。生まれて初めてのフルマラソン完走だった。頬にひげを描いて量販店FNACに現れ、走り終えて「全身痛かった」とブログに書き残したことまで、スライドは律儀に拾っていた。

「なんとかならんかったら、みんなでドラゴンボールの歌でも歌おうぜ」
後半はいよいよ、スマホ参加型クイズアプリ「Kahoot!」を使った30周年×25周年クイズ大会。ところが接続トラブルで開始が遅れる。「こういうのやるって聞いたとき、嫌な予感しかないからやめとけって言うたんやけど」「なんとかならんかったら、みんなで歌でも歌おうぜ。ドラゴンボールとか」。会場が笑いに包まれたところでシステムが復旧し、「ちゃんと信じればなんとかなるのか、ジャパンエキスポ」と無事開幕した。

日本語がわかる人だけ全問正解できるクイズ大会
出題は全6問、4択。ここからが本ステージ最大の見どころだった。フランス語で読み上げられる設問に合わせて松山氏が日本語で解説するのだが、その解説が、ほぼ答えなのである。
『戦場のフーガ』に登場する巨大戦車の名前を問う第1問では、「正解をね、日本人にだけこっそり教えてますけども、三角です。皆さん、三角を押しましょうね。日本人の方、参加されてて良かったですね」と堂々の答え漏洩(正解はタラニス)。『ドラゴンボールZ KAKAROT』の世界累計販売本数(正解は今年1月に突破した1,000万本)でも、しれっと日本語でネタバレ。『ナルティメットストームコネクションズ』に参戦する忍の数では「クイズの答えって、大体いちばん大きい数字ですよね。160やろ」と出題者自ら攻略法を伝授した。
極めつきは『アスラズ ラース』の問題だ。自社開発タイトルにもかかわらずフランス語の設問が読めず、「なんて書いてあるか俺がわからんけど、多分三角が正解なんちゃうかな」。それでも会場の正答率は高く、『Solatorobo』が樹立したギネス世界記録(2010年10月にTOKYO MXで8時間にテレビCMを100本100通り放送、2011年に正式認定)や、『.hack』シリーズに登場する架空のオンラインゲーム「The World」の問題も、ファンたちは次々に正解していった。
参考:『Solatorobo それからCODAへ』のギネス世界記録認定を伝えるサイバーコネクトツー公式ブログ(記念イラストあり)
表彰台に、日本人はいなかった
これだけ日本語で答えがダダ漏れだったにもかかわらず、集計結果の表彰台に日本人の名前はなかった。会場にわずかにいた日本人観客は、空気を読んでガチで賞を取りにいかなかったらしい。3位ベッカーさん、2位オルカさん、1位レッドさん──ずらりと並んだのはフランスのファンたちだ。ステージに呼び込まれた3人に、松山氏はサイン色紙とともに賞品を直接手渡した。「めっちゃ重いけど、なんか色々入ってる」という1位の賞品袋の中身は、受け取った本人だけのお楽しみである。

30ユーロで松山洋と飲める夜
ステージ終盤は怒涛の告知タイム。土曜11時15分には『ドラゴンボールZ KAKAROT』のマスタークラス、別ステージでは「外国人として日本のゲーム会社で働くには」という講演も行われる。ホール6の物販コーナーでは書籍やゲームソフトを購入するとその場でサインしてくれるという大盤振る舞いだ。そして極めつきは、Japan Expo閉幕後の土曜夜に開かれるファンミーティング。「距離ゼロの、ただの飲み会です。参加費なんとたったの30ユーロ」「私には翻訳アプリがありますんで」。30周年だからこその特別企画だという。
ステージが終わると、入賞を逃した観客のためにステッカーなどの記念品がステージ前にずらりと並べられ、ファンが集まった。筆者も一枚もらって帰った。パリと福岡、25年と30年。この相思相愛は、まだまだ続いていきそうだ。















