全米監督協会(DGA)は6月25日、映画スタジオやストリーミングサービスを代表する全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)と4年間の労働協約について、組合員が「圧倒的多数」で承認したと発表した。

これにより、AMPTPは大きな波乱もなく、ハリウッド三大労組の全てと今春の労使交渉を終了することができた。2023年のストライキを受けて、スタジオ側にとっての最優先目標は、契約期間を従来の3年から4年に延長することだったが、DGA、全米脚本家組合(WGA)、SAG-AFTRA(全米映画俳優・テレビ・ラジオ芸術家組合)の全てが最終的にこれを受け入れた。

DGAとの合意内容には、同組合の健康保険制度における、史上最大規模の雇用主負担増が盛り込まれている。生成AIに関しては、AIによって生成された映像が監督の創作的裁量の範囲内にあること、ならびに透明性とライセンスに関する条項を盛り込むことが確約された。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「ハリウッドの映画監督たちが、スタジオ側との新たな労働協約を承認し、AIを巡る条項でも合意に達した。2023年、生成AIへの警戒は、脚本家や俳優を大規模ストライキへと駆り立てた最大の争点の一つだった。

あれから2年、今回の合意では、AIを全面的に「敵」とみなすのではなく、「監督の創作的裁量の範囲内」に置き、透明性とライセンスのルールを定める形で決着した。

ここには、AIとの向き合い方の変化がうかがえる。技術の進歩が止められない以上、拒絶し続けるのではなく、創作者が主導権を保てるルールを整える方向へと、交渉の軸が移ってきた。

先に映画スタジオがAI企業と相次いで提携し、俳優が自らの肖像を守る仕組みを立ち上げるなど、業界全体がAIとの共存の作法を模索している。ハリウッドが、対立の段階から制度づくりの段階へと進み始めたことが見えてくる。」