ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)やソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)、その他多数の企から著作権侵害訴訟に提起される中、音楽生成AI「Suno」は米著作権管理団体MLCに対し、複数のデジタル音楽配信事業者(DSP)に関連する膨大なストリーミングデータ文書の提出を求めている。

大手レコード会社によるロイヤリティや市場希薄化の主張を念頭に置き、Sunoは4月、MLCに対する召喚状を連邦裁判所に提出。Amazon、Apple、Deezer、Pandora、SoundCloud、Spotify、Tidal、YouTubeの各社について、2021年から現在に至るまでの期間における、MLCのデータベース内の全てのレーベルの月次実績データを証明するのに十分な書類」の提出を求めている。実績データには、ISRC、タイトル、レーベル、販売元、再生回数、利用種別、照合状況、出演アーティストなどが含まれる。

Sunoの代理人によれば、数ヵ月にわたる交渉の末、MLCは数テラバイト分のデータ提供を約束(Sunoも約5,000ドルの費用負担に同意)したが、DSP(およびおそらくその他の関係者)の要請を受けて、突如として方針を転換し、開示を拒否したという。Suno側は10月15日、過去のMLCとのやり取りを添付した上で3度目の召喚状を提出した。

MLCは、レーベルや音源販売元から直接データを収集しておらず、代わりにデータを管理してもいないと反論している。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「ややこしい話だが、構図は単純だ。レコード会社側は「AIのせいで本物の音楽が聴かれなくなり、印税が減った」とSunoを訴えている。これに対しSunoは「本当に減ったのか、数字で確かめよう」と、AI登場前の2021年から現在までの再生データを出せと迫った。そのデータを握るのが、米国で楽曲のストリーミング印税を一括管理する団体MLCだ。日本でいえばJASRACのように、SpotifyやAppleなど配信各社から使用報告を集め、作詞作曲家側へ分配している。つまりSunoは、業界の「印税の帳簿」そのものに照準を合わせたことになる。訴訟で損害賠償を求める以上、損害の立証は避けて通れず、その証拠が被告に有利に働く可能性もある。一度は数テラバイトの提供に傾いたMLCが配信各社の異議で翻したという経緯も含め、AI訴訟はデータ提出を巡る攻防という新しい段階に入ったことを感じさせる。」