Apple TVに広告プランはないが、F1がアップルの広告事業に大きな追い風となっている。アップルの広告フラットフォーム担当バイスプレジデントのトッド・テレシ氏の話を元に、米エンターテインメント誌「ザ・ハリウッド・リポーター(THR)」が10月23日伝えた。

テレシ氏によると、アップルとその広告主が委託したブランドリフト調査によると、アップル上でF1をスポンサーした企業は、ブランドの認知度、好感度、購入意向の全てにおいて向上が見られ、米国のコネクテッドTV(CTV)全体のベンチマークを上回った。

同氏は「広告主をこの体験にシームレスに溶け込ませるには、どのような方法が適切なのかを真剣に検討している」と説明。Apple TVには、NetflixやHulu、その他のストリーミングサービスに見られるようなCMやスポンサーシップは存在せず、代わりに顧客体験を重視する観点から、F1やメジャーリーグサッカー(MLS)などのスポーツ生中継に限定して広告を掲載している。

調査によると、F1の視聴者層は、世帯収入の中央値がナショナルフットボールリーグ(NFL)や米プロバスケットボールリーグ(NBA)といった他の主要スポーツよりも高いことが示されている。これが高級ブランドの参入につながっており、アップルは実際に、F1参入初シーズンにおいてアメリカン・エキスプレスやフォードと大規模契約を締結した。

アップルはF1中継に注力しており、サービス事業(Apple TVを含む)を統括するエディ・キュー氏によると、視聴者数が前シーズン(ESPN放送時代)に比べて2桁伸びている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「Apple TVはアップルの月額制の映像配信サービスで、最大の売りは「CMが一切ない」ことだった。NetflixやAmazonが安価な広告付きプランへ舵を切るなかでも、広告なしを貫いてきた。その例外が、世界最高峰の自動車レースF1などのスポーツ生中継だ。考えてみれば、テレビのスポーツ観戦で企業ロゴやCMを見るのは昔から当たり前で、視聴者は広告を「邪魔」と感じにくい。アップルはそこだけに広告を認め、調査では広告主の認知度・好感度・購入意向がすべて米国の配信広告の平均を上回ったという。つまり「広告を見せない会社」が、広告が自然に馴染む場所だけを選んで参入し、高い効果を出した形だ。動画広告が嫌われる時代に、どこなら歓迎されるのかという問いへの一つの答えであり、広告ビジネスの設計として日本の配信各社にも示唆に富む事例だと思う。」