CISAC(著作権協会国際連合、シサック)会長であり、ABBAの共同創設者でもあるビョルン・ウルヴァース氏が、ジュネーブで開催された国連のAIに関するサミット「AI For Good」の基調講演に登壇。主な論点の一つとして、AI生成音楽モデルの成果物のライセンス供与に過度に注力することに対して警鐘を鳴らした。

この根底には「AIモデルの仕組みの誤解」があり、「出力されるのは、特定の曲のコピーではなく、モデルが学習した全ての情報を基に構築された、まったく新しい合成物なのだ」と指摘。報酬は、成果に対してでなく、その機械を今の姿にした『原材料』に対して支払われるべき」と強調した。

「Spotifyが登場した際にも、クリエイターに報酬を支払う前に個々の再生数の価値を計測しようとはせず、カタログのライセンス供与を行い、プラットフォームの収益の一部が権利者にまとめて還元される仕組みにした。AIも同様の仕組みで機能するはずだ」としている。

AIのサブスクリプション収益の一部は、システムの学習に作品が活用されたクリエイターたちに戻ってくる可能性があり、既に集合的ライセンス制度が機能しているように、インフラや原則は既に確立されていると主張。人間のクリエイターが生計を立てられなくなれば、AI自体が学ぶべき人間の創造性もやがて失うことになると訴えた。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「

実は7月12日、ロンドンで「ABBA Voyage」を観てきたばかりだ(近くコラムにする予定)。最新技術で全盛期の4人が蘇る、タイムスリップのような公演——その仕掛け人ビョルン・ウルヴァースが、国連のAIサミットの壇上に立った。
 
強調しておきたいのは、彼が技術に後ろ向きな人では決してないことだ。スタジオ技術を駆使して名曲を磨き、いままた最先端のアバター公演を成功させた張本人である。そのビョルンが訴えたのは、AIの否定ではなく「対価の道筋」だった。
 
AIの出力は特定の曲のコピーではなく、学習したすべてから生まれる新しい合成物。だから報酬は、成果物ではなく、機械を育てた「原材料」たる楽曲群に払うべきだ——と。
 
技術を愛し、使いこなしてきた人の言葉だからこそ、重みが違う。AI推進と作り手への敬意は両立できる。その生きた見本が、あの舞台と、この講演なのだと読み取れる。」