かつて韓国では、とあるPCゲームの対戦を放送するためにケーブルテレビ局が次々と生まれた。やがてプロリーグが組まれ、選手はスター扱いされた。「eスポーツ」が世界に広がるより前の話だ。
そのゲームの名を『StarCraft(スタークラフト)』という。世界で1000万本以上を売り上げた、SFリアルタイムストラテジーの金字塔である。
9月12日(現地時間)、開発元のBlizzard Entertainmentが同シリーズの完全新作を発表した。2010年の『StarCraft II』から約16年ぶりの新展開だ。ところが、この報せを受けた古参ファンの反応は歓喜一色とはいかなかった。なぜなら、ジャンルがまるごと変わっていたからである。
「見下ろす」から「降り立つ」へ
発表の舞台は、米アナハイムで開幕した自社イベント「BlizzCon 2026」。2023年11月以来、3年ぶりの開催となった。
新作のタイトルは『STARCRAFT』。ナンバリングもサブタイトルもないシンプルな表記だが、最大の驚きはジャンルの変更にある。シリーズの代名詞だったRTS(リアルタイムストラテジー)ではなく、物語主導型のオープンワールドシューターとして開発されるという。
RTSとは、戦場を上空から見下ろし、資源を集めて部隊を生産し、全体へ指示を出して戦うジャンルだ。対して新作では、プレイヤー自身がキャラクターを作成して名前をつけ、一兵士として地上に降り立つ。本作のGMを務めるダン・ヘイ氏は韓国メディアの合同取材で、「一本道の物語を進めつつ、その合間に広大な世界を探索できる」と説明。運営型のシーズン制タイトルではないとも明言した。
発売予定は2030年春。プラットフォームや価格は未定で、公開されたのはゲームプレイを含まないシネマティック映像のみだ。ドミニオン軍で訓練を受けた新兵が装甲をまとい、戦地へ送り出される光景が描かれる。
3度目の挑戦となった「StarCraft」復活劇
Blizzardが「StarCraft」をシューター化しようとしたのは、なにも今回が初めてではない。2002年発表の『StarCraft: Ghost』は開発が難航し、2006年に無期限の保留、2014年に当時の社長マイク・モーハイム氏が開発中止を認めた。さらに2017年に始動した別のシューター企画も、2019年に中止されたと報じられている。数えること、今回が3度目の挑戦だ。
背景には、RTSというジャンルの現実がある。『StarCraft II』『WarCraft III』の開発者が設立したFrost Giant Studiosの『Stormgate』は、4000万ドル規模の資金を集めながら期待された成果には届かなかった。2026年4月には、サーバー運営会社の事業終了を理由にオンライン対戦の提供を停止している。名作の後継を掲げるだけでは市場は戻らず、ここ数年は厳しい現実にさらされている。
RTSからの静かな撤退を掲げた
今回の発表はシリーズの復活であると同時に、RTSからの静かな撤退宣言でもある。ファンの落胆は、待たされた年月よりもそこに起因するのではないか。
一方でBlizzardは、RTSだった『Warcraft』の世界観をMMORPG『World of Warcraft』へ載せ替え、自社最大の看板に育てた実績を持つ。IPの器を作り替えることにかけては、最も経験値の高い会社だ。
日本でのStarCraftの知名度は、韓国や欧米ほど高くない。裏を返せば、この方向転換は日本のユーザーがこのIPに初めて触れる入口になり得るだろう。














