ドイツ声優協会(VDS)は9月3日、Netflixが声優と結んでいる契約に含まれるAI関連の条項について、連邦カルテル庁に苦情を申し立てたと発表。独占禁止法違反の疑いで、当局が審査を行うこととなった。

VDSによると、Netflixは権利譲渡契約(AOR)において、声優に対し、AIトレーニング、デジタル編集・複製、合成音声の生成を含む、音声録音に関する広範な権利を自社に付与することを求めている。同協会は、多くの声優が経済的な理由から、AI学習への同意を含むAORに署名せざるを得ないと感じていると主張した。

この紛争は年初から続いている。一部の声優はNetflixのAORに署名することを拒否し、Netflixとの仕事をボイコットしている。その結果、いくつかのNetflixオリジナル作品がドイツ語吹き替えなしの状態で公開された。

なお、ドイツ俳優協会(BFFS)は昨年、Netflixと独自のAIに関する規則について交渉を行い、合成音声の作成および使用については、明示的かつ個別の同意がある場合にのみ許容される条件で合意した。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「この一件は、世界有数の声優文化を持つ日本にとって、示唆の多い先行事例である。争いの核心はこうだ。NetflixのAI条項を含む契約への署名を拒んだ声優には、その後Netflixの仕事が来なくなったとされ、協会は「多くの声優が経済的な理由から署名を強いられていると感じている」と主張する。Netflix側は2月の時点で「懸念は当社の使用意図への誤解に基づく」との立場を示していた。そしてドイツでは、対応が二つの道に分かれている。一つは俳優協会BFFSの道。Netflixと交渉し、合成音声の作成・使用には明示的かつ個別の同意を要する条件を勝ち取り、ルールの中で仕事を続ける。もう一つは声優協会VDSの道。包括的な権利譲渡の構造自体を問題とし、独占禁止法違反の疑いで競争当局へ申し立てた。交渉による条件闘争と、制度による構造是正。日本でも外資配信と声優が直接向き合う場面は増えていく。その時の同意の設計と交渉の受け皿を考える上で、この二つの道は予行演習を見せてくれているかもしれない」