DLsiteを擁するviviONが8月26日、スマートフォンのブラウザからPCゲームを起動できるクラウドゲーミングサービス「viviON GAMES」を開始する。

同社はサービスインに先立ち、国内の「元PCゲーマー」は約1170万人、失われた経済規模は年間約998億円とする独自調査を公表した。

1170万人は「新市場」ではなく休眠顧客

調査は2026年8月7〜12日、全国20〜50代の男女1万人をスクリーニングし、PCゲームから離脱した1000人を対象に実施した。

本調査では、離脱層は20.2%。20〜50代人口約5800万人に乗じて約1170万人と推計している。離脱理由は「就職・転職」が33.7%で最多、「進学・卒業」20.5%、「育児・出産」19.6%、「結婚」15.8%と続き、ライフステージの変化が半数を占める。

課金経験者は37.5%、プレイしていた当時の年間支出額の中央値は2万4000円。離脱から1年以上たった約1108万人に課金経験率を掛けて試算した額が、年間約998億円である。

角川アスキー総合研究所によれば、2025年の国内ゲームコンテンツ市場は前年比8.0%増の2兆5885億円。998億円はその約4%に当たる。ただし復帰者が当時と同水準を支出する前提の理論値であり、実需とは距離がある。

むしろ1170万人はviviONにとって外部市場ではない。子会社エイシスが運営するDLsiteの利用者は1470万人、取扱作品は170万(いずれも2025年3月末時点)。約30年かけて蓄積した顧客層と離脱層は大きく重なる。よってviviONによる調査は市場の発見ではなく、休眠顧客リストの再評価に近い。

撤退した技術を買い実行環境を内製化

viviON GAMESの根幹を為すのは、「OOParts Engine」と呼ばれるクラウドゲーミング技術だ。

ただし、この技術は自社開発ではない。2025年8月、開発元の株式会社ブラックが基盤システムと特許をエイシス(DLSite運営元)へ売却し、自社サービス「OOParts」を終了。開発メンバーも移籍している。

きっかけは同年1月、viviON側がエンジンのBtoB提供を打診したところ、ブラック側から事業ごとの譲渡を逆提案されたことだった。DLsiteは以前からPCゲームをスマホで遊べる「DL Play Box」を手がけていたが、これで基盤技術そのものを握ったことになる。同年11月には約2万タイトルを対象とする実証「DLsiteの大実験」を実施。遅延への不満よりユーザーからの好反応が上回ったことで、買い切りモデルを選ぶ判断につながった。

「移植費ゼロ」の恩恵

viviON GAMESのサーバー側はLinuxとWineで構成され、PC版のビルドさえあればスマホ非対応のエンジンで作られた作品も動く。移植作業も移植費も開発者側には発生しない。さらに5月には、インディーゲームレーベル「viviON Lab」も立ち上げた。

三つが揃い、作品の発見から購入、起動までを一社で設計できる。IP保有企業のインディー参入は相次ぐが、自前の決済基盤と長年の配信実績まで備える例は少ない。

課題はラインナップと単位経済

ローンチ時のタイトル数は20〜30本程度の見込み。弾幕系やFPSなど、入力遅延に厳しいジャンルは技術的に難しいと同社も認めており、アドベンチャーやシミュレーションに偏る。また基本的にタイトルは買い切りである以上、長時間プレイするユーザーほどサーバー原価が収益を圧迫する。

競合はGeForce NOWでもXboxでもなく、離脱者の隙間時間を奪う短尺動画やスマホゲームだ。休眠顧客を呼び戻せるかは、この奪い合いに勝てるかにかかっていると言えるだろう。