Netflixは米国で3月26日から適用される新料金体系を発表。広告付きスタンダートプランは1ドル上がり月額8.99ドル(約1,434円)となり、スタンダードプラン(広告なし)は19.99ドル、プレミアムプランは26.99ドルと、それぞれ2ドル引き上げられる。

米エンターテインメント業界誌バラエティー(Variety)は、Netflixが今、最大市場の米国で値上げを発表した理由として、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収を断念したことで規制当局の心象を気にする必要がなくなったためだと分析している。

また、メディア調査会社モフェットネイサンソンの推計によると、Netflixの視聴1時間当たり収益(2025年)は48セントと業界最低水準で、最もコストパフォーマンスが高い(Disney+64セント、Peacock72セント、HBO Max72セント、Paramount+93セント)。広告が占める割合も最も小さく、広告収入の伸びしろがあるだけでなく、競争上の観点からも価格を引き上げる余地があることが示されている。

モフェットネイサンソンのアナリストは今回の値上げを、同社の長期戦略を強化するものだと指摘。「最高価格と最低価格に大きな格差を維持することで、価格にあまり敏感でない加入者からの収益化を最大化すると同時に、敏感な顧客を発展途上の広告付きプランへと誘導し、エンゲージメントを高め、ひいては広告収入を押し上げる」とした上で、「その結果、加入者層全体から価値を引き出す『両方の長所を兼ね備えた』アプローチが実現し、さらに高い利益率をもたらす」との見方を示した。

(文:坂本泉)

榎本編集長「Netflixが米国でスタンダードプランを月約20ドル(約3,200円)に値上げした。ただ、視聴1時間当たりの収益が48セントと業界最低水準——Disney+(64セント)やHBO Max(72セント)と比べてもユーザーにとって最もコストパフォーマンスが高い——という実態は変わらない(MoffettNathanson調べ)。

大規模な解約につながる可能性は低いとみる向きが多く、むしろ月約9ドル(約1,430円)の広告付きプランへの誘導を加速する狙いもあるとの見方もある。

WBD買収断念で規制当局への配慮が不要になったタイミングを活かした今回の判断は、市場支配力を持つプラットフォームならではの動きといえる。Spotifyもそうだが、ストリーミング戦争の「勝者」が収益の刈り取りフェーズに入りつつあるとすれば、今後は各社の値上げ競争が本格化していく可能性もありそうだ。」