2026年5月25日(月)より、Nintendo Switch 2 日本語・国内専用モデルの価格が税込49,980円から税込59,980円へ改定された。1万円、率にして約20%の引き上げだ。

任天堂・古川俊太郎社長は値上げの理由として、「メモリ高騰や為替など中長期的な市場環境の変化」を挙げている。本体価格だけでなく、Nintendo Switch Onlineの月額料金も2026年7月1日より改定予定で、ハードとサービスの両方にわたる値上げとなる。

そして値上げと同日、もう一つの変化があった。マイニンテンドーストアの購入条件の変更だ。これまで購入には「2025年12月21日23時59分時点でNintendo Switchのプレイ時間が50時間以上」という条件が必要だったが、5月25日よりこの縛りが完全に撤廃された。現在の条件は「1つのニンテンドーアカウントにつき各1台まで」のみとなっている。

なぜ今、このタイミングで値上げなのか

今回の価格改定の背景には、長引く半導体不足によるメモリ価格の高止まりや、円安に伴うドル建て部品コストの膨張といった業界全体の共通課題がある。しかし、任天堂の意図は単なるコスト転嫁にとどまらない。初代Switchが「手の届く価格」で築き上げた普及台数、マリオやゼルダといった強力なIPの力、そして定着したサブスクリプション。これらによって確立された「高くても買ってもらえる」という自社ブランドへの絶対的な自信が、6万円台という強気な価格設定を支えている。

最も特徴的なのは、値上げと同時にマイニンテンドーストアでの「プレイ時間50時間以上」という購入条件を撤廃した点だ。この施策は供給の安定を示すと同時に、高額な新価格を前にして余計な購入障壁を取り除きたいという判断の表れでもある。価格は上げるが誰でも買えるようにする。この一見矛盾する一手には、製品のプレミアム性を維持しつつも、特定のコアファンだけに閉じないという任天堂の姿勢が透けて見える。

だが、この戦略はコミュニティに二極化のリスクをもたらす。独身のコアゲーマーには許容範囲であっても、子どもへのプレゼントやライト層にとっては6万円という壁は厚い。購入条件の緩和で間口が広がったはずが、価格そのものが新たな参入障壁として機能する皮肉な構図が生じている。さらにオンラインサービスの月額値上げも重なり、ゲーム機を維持するランニングコストが可視化されたことで、ファミリー層への負担は確実に増している。

業界全体を見渡せば、任天堂のこの決断はコンソール市場全体の価格水準を上方修正する追認シグナルになり得る。ゲーム機という存在が、映画のIMAX体験のように「良いものには相応の値段がついて当然」という高級財へ移行するかの試金石だ。値上げしても選ばれ続けるブランドであり落とし続けられるか、任天堂が提示した難題の答えはこれからの市場が証明することになる。