米連邦地方裁判所は7月20日、AIチャットボット「Claude(クロード)」を手がける米アンソロピック(Anthropic)による総額15億ドル(約2,447億円)の集団訴訟の和解案を最終承認した。

本件は、米書籍作家3人が2024年に提起した著作権侵害訴訟に関するもの。裁判所は昨年、アンソロピックがAIを訓練するために書籍を無許可で使用することはフェアユース(公正な利用)だが、海賊版書籍の利用はフェアユースに当たらないとして、著作権侵害を認める判決を下した。損害賠償額が数十億ドル規模に達する可能性もあったことから、アンソロピックが和解を急いだとみられている。

1作品当たり3,000ドルが支払われる取り決めで、対象の書籍48万2,000冊超のうち約91%について、著者や出版社から権利主張が行われているという。

この和解は、米著作権法史上で最大規模とされるが、TechCrunchは「多くのクリエイターは依然としてこれを勝利とは見なしていない」と指摘。和解案の最終承認により本件は終結したものの、今回の判決は一つの地方裁の判決に過ぎず、またアンソロピックが和解を選択したことで、本件が控訴裁判所に持ち込まれ、拘束力のある判例となることは決してないため、業界全体の法的争点は解決されたわけではない。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「AIのClaudeを手がけるアンソロピックが、作家たちとの和解に約2,447億円を支払う。史上最大の著作権和解だが、その中身は「AIの全面敗北」ではない。
裁判所の判断は、二つを明確に切り分けた。書籍でAIを訓練すること自体は、公正な利用として適法。だが、その本を海賊版サイトから集めたことは違法——つまり「学ぶのは自由、ただし教材は正規に買え」という理屈だ。
問われたのはAIの学習ではなく、データの調達方法だった。この区別は重要である。「AIに学ばせること自体が盗み」という主張は退けられ、争点は「素材をどう入手したか」へ移った。
図書館で学ぶ学生は罪に問われないが、万引きした本で学べば話は別、ということだ。巨額の金額の陰で、AIと著作権の議論の土俵そのものが、静かに整理された判決になるかもしれない。」