「テレビ界のアカデミー賞」とも称されるプライムタイム・エミー賞の第78回授賞式が9月14日に開催された。Apple TVは28部門(+広告部門1部門)で受賞し、最多受賞ネットワークの称号を初めて獲得した。

Netflixは2018年、HBOと並んで受賞数で首位に立った初のストリーミングプラットフォームとなり、それ以来、エミー賞は概ね両社二強による争いとなっていた。しかし今年は、ノミネート数ではApple TVが87部門と、HBO/HBO Max(122部門)やNetflix(111部門)に次ぐ位置にあったものの、受賞結果としては、HBO/HBO Maxの21部門、Netflixの16部門を上回った。

Apple TVの作品の中でも、ケイティ・ディポルド監督のホラーコメディ『ウィドウズ・ベイ』は14部門を受賞。これにより、Apple TVは、2年連続で最も多くのエミー賞を受賞したシリーズを擁するプラットフォームとなった。なお、『ウィドウズ・ベイ』は、コメディ部門のノミネート作品の中で視聴率が最も低かったとされる。

エミー賞の放送権獲得に向けて交渉中と報じられているアマゾン・ドット・コム傘下のPrime Videoは、受賞数がわずか10部門にとどまり、その半数は同社が打ち切りを決定したばかりの番組によるものだった。

(文:坂本 泉)
榎本編集長「今年のエミー賞の主役は、日本出身の才人が手がけたホラーコメディだった。Apple TVの『ウィドウズ・ベイ』。監督・製作総指揮のヒロ・ムライは、『翼をください』の作曲家でアルファレコード創業者、村井邦彦氏の息子である。『アトランタ』やドナルド・グローヴァーのMVで米映像界の頂点に立った彼の新作が、作品賞を含む14冠を達成し、コメディシリーズの年間最多受賞記録を塗り替えた。
しかも本作、エミー作品賞にノミネートされたコメディの中では、対象期間中の視聴者数が最も少なかったという。舞台は、数世紀の呪いに祟られたニューイングランド沖の孤島の町。迷信深い住民たちと、呪いを信じない市長が、怪異と観光振興の間で右往左往する。『ジョーズ』とスティーヴン・キングを煮込んだ怖さに、人間味のある笑いが同居する快作で、Rotten Tomatoesでは批評家支持率98%。
視聴者数の多寡だけでは測れない作品を世に送り出した配信と作り手の勝利であり、日本にルーツを持つ才能の快挙でもある。未見なら、追いかける価値は十分にある。」