韓国のSHIFT UPが開発中ソフト『Stellar Blade: BLOOD RAIN』をめぐり、賛否を巻き起こしたAI生成ミュージックビデオ(MV)について言及した。
同社CTOのイ・ドンギ氏は海外メディアのインタビューにて、「今後はゲームに関連するコンテンツと実験的コンテンツを明確に区別していく」とコメント。短文だが、生成AIとゲームプロモーションの距離感を測るうえで示唆に富む。
隠していたわけではないのになぜ炎上したのか
SHIFT UPは『勝利の女神:NIKKE』で知られる韓国のゲーム企業。2024年発売のPS5向けアクション『ステラーブレイド』は同社初の家庭用機タイトルで、『BLOOD RAIN』は2026年6月発表のその続編だ。
ことの発端は2026年7月31日。SHIFT UPは公式YouTubeで、同作品の新たな主人公「Evie」を据えた楽曲「”Wanna be in LOVE”」のMVを公開した。動画にはゲームのリソースをAIの支援で再生成したとの説明が付され、YouTubeの開示欄にもAI生成・改変の表示があった。
それでも批判は殺到した。ここで考えられる争点は二つ。一つは品質で、映像のクオリティの低さが「生成AIまる出し」と批判された。もう一つは用途で、開発の裏側ではなくファンが最初に触れる公式プロモーションに使った点への反発である。
SHIFT UP代表のキム・ヒョンテ氏は、「Evieは自社アーティストが1年以上かけて作り上げた。AIがゼロから生んだわけではない」と説明したが、沈静化には至らなかった。同氏は2026年1月、韓国大統領府の「2026年経済成長戦略」国民報告会で、AIを使えば1人が100人分の役割を果たせるとの見解を示したと韓国メディアGamemecaが報じている。AI活用に前向きな経営トップという文脈も、反発を強めた一因とみられる。
「区別する」という落としどころ
今回のCTO発言は、この経緯を踏まえた軌道修正と読める。「ゲーム本編に紐づく公式コンテンツと、技術検証を兼ねた実験を同じ看板で出さない」という整理だ。
SHIFT UPは2026年3月時点でAI Labsを軸に画像・音声生成の基礎技術確保を進めていたと報じられ、担当者はAIを最終成果物へ直接適用しないことを原則とするとコメントしていた。CTOも今回、AIは開発者の創造性やスキルを支えるツールであり、目的は高品質なゲームを作ることだと述べる。発言はAI活用の撤回ではなく、既定路線の再確認と見るのが妥当だろう。
業界に共通する「開示しても納得されない」問題
同種の摩擦はSHIFT UPだけでなく、ゲーム業界の各社で起きている。Activisionは2025年2月、『Call of Duty: Black Ops 6』のSteamストアページに、一部のゲームアセット開発に生成AIツールを使用していると明記した。だがその後も『Black Ops 7』や『Modern Warfare 4』のベータでアセットへの疑義が繰り返されている。開示は説明責任を果たすが、そのまま納得感が生まれるとは限らない。
くわえて、作り手側の空気も厳しい。GDCを運営するInforma Techが公開した調査「2026 STATE OF THE GAME INDUSTRY」では、生成AIが業界に悪影響を与えるとの回答が52%、肯定は7%だった。2024年調査は肯定21%・否定18%とほぼ拮抗しており、逆風は年々強まっている。
問われるのは「使うか」ではなく「どこで使うか」
今回の一件が示すのは、AIを使うか否かではなく、どこで使うかの設計が問われ始めたという事実だ。裏方の効率化なら摩擦は小さいが、完成品として差し出した瞬間に品質と誠実さの基準は跳ね上がる。SHIFT UPは前作『Stellar Blade』のスイッチ2版を、9月17日開幕の東京ゲームショウ2026に世界初の一般試遊として出展予定だ。線引きを言葉で示した以上、次に問われるのはその運用の在り方ではないだろうか。














