ソニー・ミュージックパブリッシング(SMP)とワーナー・チャペル・ミュージック(WCM)は8月28日、AIチャットボット「Claude」を手がける米アンソロピックを著作権侵害の疑いで提訴した。「今なお続く史上最大かつ最も露骨な知的財産の窃盗事件の一つ」だと主張している。

これにより、世界三大メジャーレーベル3社全ての出版部門がアンソロピックを訴えたこととなる。ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)およびアブコ(ABKCO)ミュージック&レコーズ、コンコード・ミュージック・グループは2023年、アンソロピックが少なくとも500曲の歌詞を基に、Claudeを訓練したとして提訴。これら出版社は今年1月、2万点以上の作品を対象とし、30億ドル以上の損害賠償を求めて2件目の訴訟を提起した。BMGとラウンド・ヒル・ミュージックもアンソロピックと法廷闘中だ。

ソニーとワーナーは、故意に侵害された作品1点につき最大15万ドルの法定損害賠償に加え、著作権管理情報の削除が疑われる各事例につき最大2万5,000ドルの賠償を求めている。訴状では、出版社による著作権侵害の疑いがある楽曲が「数万曲」に上ると指摘されており、賠償責任は数十億ドル規模に達することになる。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「今回の提訴の背景には、参照点となる一つの先例がある。アンソロピックは昨年、書籍の著者たちとの訴訟で15億ドルという和解に合意した。海賊版由来の書籍データの取得が問われた案件である。テキストの学習を巡り、具体的な金額の前例ができた——音楽出版社側がこの相場を意識していないとは考えにくい。実際、UMG系出版社の2件目の訴訟は30億ドル超を請求し、今回のソニー・ワーナー連合も数十億ドル規模を求める。原告側の主張には、歌詞サイトからの取得や、出力での歌詞の再現なども含まれ、アンソロピック側は反論の構えだ。司法判断はこれからで、予断は禁物である。ただ、確かなことが一つある。書籍、報道、歌詞と、テキストの権利者たちが次々と法廷や交渉のテーブルに着き、AI学習の対価の相場が、判例と和解の積み重ねで形成されつつあることだ。その相場表の「歌詞」の欄が、いくらで埋まるのか。音楽出版の未来の収益に直結する数字として、業界全体が見守ることになる。」