マイクロソフトは8月26日(現地時間)、Xboxの物理ディスク所有者が、そのゲームのデジタル版を利用する権利を取得できる新機能を発表した。8月31日からXbox Insider向けのテストが始まる。地味な機能追加に見えるが、いま業界で最も揉めている論点に直結する。
ディスクを挿すだけでデジタル版が手に入る
対応するディスクをXbox OneまたはXbox Series Xに挿入してゲームを起動すると、デジタル版の利用権がアカウントに付与される。一度取得すれば、以後はディスクを挿さずにプレイできる。対象タイトルなら、一度の購入で家庭用機版とPC版の両方を遊べる「Xbox Play Anywhere」やクラウド経由のストリーミングも利用できる。
これまでは、同じゲームを物理とデジタルで二重に購入する必要があった。その手間が消える。対象は数千本からで、順次拡大するという。ただし初代XboxとXbox 360のディスクは対象外で、ドライブを搭載しないXbox Series Sや、Xbox Series Xのデジタルエディションでは利用できない。
背景にあるソニーの「2028年」
ソニー・インタラクティブエンタテインメントは7月1日、2028年1月以降に発売するPlayStation向け新作について、物理ディスクの生産終了を発表している。デジタル購入が物理を大きく上回る消費者動向への対応と説明したが、所有や保存を重視する層から強い反発が起きた。直前には『Grand Theft Auto VI』のパッケージ版がディスクではなくダウンロードコード同梱だと判明し、物理版の形骸化が議論を呼んでいた。
さらにソニーは同日、PS3とPS Vita向けストアを2027年7月までに順次閉鎖することも発表しており、デジタルで買ったものがいつまで残るのかという不安に火が付いた。
マイクロソフトは今回の発表文で、ソニーには一切触れていない。しかし本件を「ゲーム保存への広範な取り組みの一環」と位置づけるXboxの次世代担当バイスプレジデント、ジェイソン・ロナルド氏の説明は、対比を強く意識していることは明白だろう。次世代Xboxはドライブ非搭載とする報道と未決定とする報道が併存するが、いずれにせよ手持ちのコレクションを持ち越せるというメッセージになる。
注目すべきは「取り消し可能」の一語
ただし、内容は正確に押さえたい。マイクロソフトが示す条件は「ディスク1枚につき、取り消し可能なデジタルライセンス1つ」だ。権利はアカウントに紐づくが、ディスクとの結び付きは切れない。ロナルド氏は、ディスクを売却するなどして相手がそれを自分のコンソールに挿入すれば、権利は新しい所有者へ移ると説明している。7月時点の報道では権利はコンソール単位とされていたが、同氏の発言で修正された。
つまりディスクは複製の元ではなく、譲渡可能な「鍵」だ。中古市場との整合は保たれるが、得られるのは無条件の所有権ではない。対応タイトルもパブリッシャー側の参加が前提とされ、全カタログが揃う保証はない。
13年越しの再挑戦
本事例のような「メディアと権利を結び付ける発想」自体は新しくない。マイクロソフトは2013年、Xbox One発表時に24時間ごとのオンライン認証と中古売買の制限を含むデジタル権利管理を打ち出し、猛反発を受けて撤回した過去を持つ。今回は同じ発想を、制限ではなく利便性と保存の側に組み替えた。
物理メディアの縮小は避けがたい。だからこそ移行期に既存の資産をどう扱うかという設計思想が、プラットフォームの評価を分ける。今回の発表は、その差別化を狙った一手だ。














